「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

活動状況|いのち宣言

【提言】みんなでつくる音楽でいのちをはぐくみ、生まれ育った環境や障害の有無にしばられることなく、誰もが自由で創造的で平和な共生社会を実現する。

概要

音楽自体、その教育的効果が認識されていることで、就学前、学校を問わず、教育現場に取り入れられています。特に、仲間と一緒に歌う合唱、楽器を演奏する合奏では、集団意識の形成や団体としての行動変容が期待され、その過程において、子どもたちの様々な認知、非認知能力向上へ貢献すると理解されており、最新の知見からも、それを裏付けるエビデンスが寄せられています。

音楽を通して子どもたちの生きる力をはぐくみ、社会を変革することを目的に1975年に南米ベネズエラで始まったエル・システマの運動も世界に広がるにつれ、様々な専門家による外部評価調査等を経て、その意義が客観的に理解されつつあります。米国では、ロサンゼルスフィルハーモニックが地元音楽団体と主導するYouth Orchestra Los Angeles(YOLA)も、南カリフォルニア大学脳と創造性研究所に、経年で参加者と非参加者を対象としたケースコントロール研究を依頼。結果は、明らかに、YOLAに参加している子どもたちの脳は、そうでない子どもたちに比べて有意な差を持って発達していると示しています。
また日本では、エル・システマジャパンが青山学院大学に依頼した2014年度の外部評価調査によると、相馬子どもオーケストラの子どもたちを対象とした参与観察とアンケート調査から、全国調査における同様の質問結果と比べて、メンバーでは、自分の行動に自信を持っていると回答した割合が高いことが観察されました。

一方、集団での音楽活動となると、無料にすることで経済的な問題を解決したとしても、ルールや規範に制約され、これまではどうしても、何らかの障害があることや、マイペースで進めたい等、そこに参加できない人がいることも事実でした。例えば日本では、音楽教育に関わらず、どうしても集団に合わせ、努力を怠らない子どもが評価される傾向があります。しかし昨今、音楽をやりたいという子も多様で、熱心に集中して一生懸命頑張るタイプもいれば、興味関心が分散しがちで気楽にゆるく楽しみたいタイプもいます。努力を怠らない子以外も、自由に過ごせていたくなるような場づくりが、音楽教育でも必要かと思います。

もちろん、合唱や合奏は、仲間と共にハーモニーを作る活動なので、ある程度、皆が同じ方向を向いて、鍛錬することが必要です。ただ、そのためには、多様性が尊重され、個々の権利と尊厳と自由が保証されていることが肝心です。異なる個性が、各々の状況を理解し、包摂され、試行錯誤しながらも一緒に何かをつくっていく喜びはかけがいのないものになるはずで、音楽はまさにそのために適しているものだと考えます。

だからこそ、共創の音楽教育は、SDGsでは、教育や、不平等の解消、まちづくりといった目標だけでなく、平和と公正の実現という大きなゴールに繋がると信じています。2050年までには、人工知能や医療の発展による恩恵がある一方、多くの国で高齢化が進むこともあり疎外の問題が深刻化していくのではないかと危惧されています。音楽教室というミクロレベルで保証される自由と平等こそが、公正な共生社会、そして平和な世界の礎になることを、世界各地で不公平が蔓延し、憎悪と対立による戦火が止まない今、改めて問い直したいと思います。

いのち会議としては、2050年までに地球上の誰もが自由で創造性を発揮できる共生社会に暮らすことができるようになることを目指して、会議の協力団体であるエル・システマジャパン、そして音楽・文化芸術、教育、福祉、他関連するすべての分野ステークホールダーと協働し、楽しくも自己や集団の可能性を最大限に探究できる音楽教育が、様々なレベルで可能となるような仕組みを整えて行きます。

参考情報

・南カリフォルニア大学脳と創造性研究所によるYOLAの外部評価調査
 https://www.laphil.com/press/releases/1672
 https://dornsife.usc.edu/bci/brain-and-music-program/

・エル・システマジャパン
 https://www.elsistemajapan.org

関連するアクションパネルのテーマ

11.アート・文化・スポーツ

関連する「いのち」

いのちを「はぐくむ」、いのちを「つなぐ」、いのちを「かんじる」

関連するSDGs