活動状況|アクションパネル
【開催報告】2024年10月24日(木)、いのち会議アクションパネル エネルギー・気候変動「そろそろ皆で真剣に考えてみよう!!2050年カーボンニュートラルな未来社会」を開催しました!
2024年10月24日(木) いのち会議アクションパネル エネルギー・気候変動「そろそろ皆で真剣に考えてみよう!!2050年カーボンニュートラルな未来社会」を開催しました。話題提供者の方々含め会場に27名、オンラインに25名が参加しました。以下に概要を報告します。
開会挨拶 堂目 卓生(大阪大学総長補佐、「いのち会議」事業実行委員会副委員長):「『いのち会議』について」
はじめに、堂目先生よりいのち会議についての紹介がなされました。いのちの理念とは、「助けるいのち(capable)」と「助けられるいのち(vulnerable)」が常に入れ替わる可能性のある時代、前者ではなく後者を中心に据える共助社会を目指すものです。また、いのち会議・宣言とは、いのちの理念を核とするアジェンダをソフトレガシーとして世界へ発信していこうというものです。
西和哉(フリーコンサルタント)「脱炭素化に向けたモビリティ領域の動向」
西氏からは、「脱炭素化に向けたモビリティ領域の動向」というテーマでお話しいただきました。日本や欧州を含む各国政府は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて厳しい規制や目標を設定しており、自動車メーカーも対応を進めていますが、一部の企業では計画の見直しや目標延期も見られます。BEV販売は増加傾向にあり、2023年には世界で1000万台を超えましたが、補助金削減や地政学的リスクが影響し、成長速度が鈍化している部分もあります。長期的には電動化が進展する見込みで、各国や企業の動向が注目されています。
谷紀子(パナソニックエレクトリックワークス社エネルギー戦略室事業推進部グローバル推進課課長)「風力発電カップリングプラントにおける水素燃料電池の連携の可能性」
谷氏からは、「風力発電カップリングプラントにおける水素燃料電池の連携の可能性」というテーマでお話しいただきました。パナソニックは滋賀県草津市の施設で、太陽光発電、蓄電池、水素燃料電池を組み合わせた分散型エネルギーシステムを運用しており、天候や需要変動に対応しながら効率的なエネルギー供給を実現しています。水素タンクや純水素燃料電池を活用し、ピーク時には水素を利用して電力を補完する仕組みを構築しています。また、水素社会の実現に向けたインフラ整備や他企業との連携を進め、関西万博などでの実証にも取り組んでいます。
廣瀬圭一(NEDO再生可能エネルギー部主査)「カーボンニュートラルに向けた直流利活用の状況について」
廣瀬氏からは、「カーボンニュートラルに向けた直流利活用の状況について」というテーマでお話しいただきました。カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーの活用が不可欠であり、電気の効率的な利用が重要とされています。交流と直流の両方を効果的に活用することが求められ、特に直流は電池や太陽光発電などでの利用が増加しています。歴史的にはエジソンとテスラの交流・直流戦争もあり、現代では直流も重要な役割を担うようになっています。今後、直流と交流の両方をうまく使いこなすことが、持続可能なエネルギー社会の実現に繋がります。
ディスカッション:論点の整理
モデレーターの新藤先生よりディスカッションでの論点が提示されました。今回の論点は以下の3つです。
①このまま順調に温室効果ガスは削減するのか?
②産業部門(工場等)を削減すればいいのか?
③ユーザーの負担はどのくらい?
ディスカッション:登壇者間の質疑
ここでは、登壇者同士での質疑がなされました。以下に簡単に内容を報告します。
○西:日本の技術の凄さを再認識した一方で、ルールメイクで欧州が先行する中で、日本企業の勝ち筋は何になるのか?
→ 谷:まずはインフラ整備・ルールメイキングの局面に入っていくしかない。例えば水素協議会に参加・インフラ整備への投資が必要だろう。
○西:日本における中国のような超長距離直流送電のユースケースの見通しは?
→ 廣瀬:日本では基本的には発生しないだろうが、洋上風力を沿岸から遠くにもっていく方針になっているなかで活用するのがメインになってくるだろう。
○谷・新藤:水素自動車の可能性について?
→ 西:自動車メーカーの戦略もあるが(バッテリーオンリーだと中国優位)、水素インフラの整備が一番大きなカギで、基本的にはバスやトラックなどで活用の可能性が大きい。ただ、自家用車では水素単体の自動車は難しく、複合燃料の一部として活用はされていく可能性はあるだろう
○谷:直流活用と国の政策の関係?
→ 廣瀬:エネルギー活用計画でも少しずつは出てきている。ただ、海外の直流利活用技術の方がさらに進んでいるので危機感も。議論の場を増やす必要性がある。
○廣瀬:運輸やデーターセンターなど電化が進むが縦割りになっている分野を超えた連携は進みそうか?
→ 西:欧州では横の連携が進み始めているが、日本では大企業内でもルール作りも難しい状況。今後業界を超えた旗振りが不可欠。
○廣瀬:水素をどう運ぶのか。超伝導を活用した電気と水素のハイブリッド輸送技術のようなブレイクスルーに繋がるようなアイデアは?
→ 谷:水素吸蔵合金による水素運輸の研究も進んでおり、万博でも展示予定。
論点①:このまま順調に温室効果ガスは削減するのか?
ここでは、このまま順調に温室効果ガスは削減するのかという論点について議論され、AIやデータセンターの活発化により電力需要が増加し、これに対応することが課題となっているといった意見や、過去のエネルギー基本計画には「無理な目標」が含まれており、紛争やエネルギー価格の上昇が影響して厳しい状況が続いている、環境教育や生活スタイルの変化に対応するため、企業と個人の行動変化が求められる、最終的には、政府や市場の成熟度が重要で、粘り強い交渉や施策の改善が必要だといった意見が出ました。
論点②:産業部門(工場等)を削減すればいいのか?
ここでは、産業部門の削減だけで気候変動問題に対応できるのかという論点について議論されています。産業界の削減努力だけでなく、サプライチェーン全体や廃棄物問題を視野に入れる必要性が指摘され、また、再生可能エネルギーやライフサイクルを考慮した政策や消費者行動の変容が重要とされ、小学校教育などで行動様式の改善を促進するアイデアも議論されました。
論点③:私たちユーザーの負担はどのくらい?
ここでは、カーボンニュートラルに向けたユーザー負担について議論されました。電気代の増加や中国製部品への依存、産業界の対応が課題として挙げられ、負担の許容範囲や日本産業の再構築が重要ではないかという意見が出ました。また、負担については、CNに限らずあらゆる経済活動に付随する問題であり、生産者やユーザー同士の繋がり(共感)によって上乗せできる価値を産み出せるかどうかが今後の鍵になるだろうといった意見が挙げられました。