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活動状況|アクションパネル

【開催報告】2023年9月6日(水)、共創ネットワークシンポジウム「地域でつなぐ、 未来をはぐくむ こども食堂」を開催しました。

<日時>  2023年9月6日(水)13:00~17:30
<場所>  大阪大学中之島センター7階 セミナー室
<参加者> 81名

<プログラム>
・開会挨拶:堂目卓生/大阪大学SSI長・同大学経済学研究科教授
・大阪府こども食堂ネットワーク連絡会の紹介:上須道徳・大阪大学経済学研究科・プロジェクトリーダー
・基調講演:湯浅誠/認定特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長
・大阪府下各地域ネットワークについて話題提供
  豊中(豊中市こども未来部こども支援課) 
  堺(堺市社会福祉協議会)
  南泉州:高石市~岬町(特定非営利活動法人キリン子ども応援団) 
  富田林(富田林市子育て福祉部こども未来部) 
・パネルディスカッション
  登壇者:大阪府こども食堂ネットワーク連絡会参画団体、むすびえ
  モデレーター:上須道徳
・名刺交換会(中之島センター5階いのち共感ひろばへ移動)

<実施体制>
主催:大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)
   大阪府こども食堂ネットワーク連絡会
共催:大阪大学経済学研究科
後援:いのち会議市民部門

こども食堂をテーマにシンポジウム

2023年9月6日(水)に、SSI基幹プロジェクト共創ネットワークシンポジウム「地域でつなぐ、 未来をはぐくむ こども食堂」が大阪大学中之島センターで開催されました。本シンポジウムは、SSI基幹プロジェクト「地域ではぐくむこどもと未来:共創ネットワークの実践と理論」(プロジェクトリーダー:上須道徳教授)のキックオフの場でもありました。自治体、社会福祉協議会、NPO、大学などから合計81名の参加があり、地域の未来にとって重要なインフラとなりつつあるこども食堂やこども支援について経験や情報、ビジョンが共有されました。

「いのち会議」「いのち宣言」/「大阪府こども食堂ネットワーク」とは

冒頭、開会の挨拶が堂目卓生SSI長よりあり、SSIの目指すありたい社会と「いのち会議」「いのち宣言」について説明がありました。

その後、上須道徳プロジェクトリーダーから「大阪府こども食堂ネットワーク連絡会」について説明がありました。連絡会は、行政、社会福祉協議会、中間支援団体、大学が協働し2023年3月3日に発足しました。その目的は、大阪府下のこども食堂を支援する自治体、社協、中間支援組織がつどい、こども食堂の運営支援に関する情報共有、府域でこども食堂を応援する企業等との情報・意見交換を行うことを通して、府下のこども食堂の発展を目指すことです。プロジェクトでは対話の場を通じて、現場での経験の共有と大学の研究・実践が好循環を生み出し、それら成果が現場にフィードバックされることを目指していると話されました。連絡会が自由な対話の場となるような「心得」と「お作法」――たとえば、みなが対等な立場であること、言質を取らないことなど――も披露されました。

「いるだけでいい」場所が多くある地域へ

基調講演は、湯浅誠 認定特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長より「こども食堂と私たちの地域」と題してお話いただきました。
こども食堂は8割が参加条件のない、公園のような空間であることが特徴で、それこそが対象を絞って政策を行う行政との違いです。現在全国に約7400のこども食堂があり、ほぼ中学校数と同じです。湯浅さんからはこうしたこども食堂が当たり前にある社会をどのように受け止めたらいいだろうか、という問いが投げかけられました。そして、何かが出来るから認められるという「出来る(Do)→認められる(Be)」という価値観から、ただいるだけで認められるという「認められる(Be)→出来る(Do)」という価値観への転換が求められているのではないかと話されました。「いるだけでいい」場所というのは誰にとっても多ければ多い方がよく、そんな地域をつくっていきましょうと、参加者に呼びかけられて基調講演を終えられました。

大阪府下各地域ネットワークについての話題提供

次に、豊中、堺、南泉州、富田林の大阪府内の4つの地域ネットワークについて話題提供いただきました。

まず豊中市こども未来部こども支援課(いこっと)とNPOとよなかESDからは、冒頭に市内のこども食堂調査の結果をもとに、こども食堂には目的や機能に応じて「すごす場」と「ささえる場」の2つの特徴があることがわかったと話されました。また、地域在住の経験者と学生ボランティアによる居場所コーディネーター(市域+圏域)を配置し、運営支援やポータルサイト、ネットワーク会議、セミナー、人材・寄付関係などの活動を通じて、中間支援団体との協働や、既存事業の活用による多様な主体による居場所の展開が可能になっていることが述べられました。

次に、堺市社会福祉協議会からは堺市におけるこども食堂について具体的なお話がありました。コーディネーターを配置しネットワークを形成することで、市域と区域の重層的支援が可能になっているといいます。また自主・自由・活発・協働を特徴とするネットワーク円卓会議が年3回実施されており、ネットワークに加入すると手続きなしでネットワーク保険の契約に進むことや、寄付や応援者にどのように共感してもらうかなど、活動の工夫が話されました。

次に南泉州(高石市~岬町の8市4町)からはNPOキリン子ども応援団に話題提供いただきました。NPOキリン子ども応援団は子ども食堂とフードバンクの運営を行っている団体です。行政ではなくNPOが中心となってネットワークを行うことになった背景、その強みや課題などについて話していただきました。むすびえサミットに行くことによって、食材・資金、場所、仲間に加え「思い(悩み)の共有できる場所」が必要だということを強く実感・認識したことがきっかけで、泉州こども食堂シンポを開催し、南大阪こども食堂ネットワークをつくったといいます。こうした経験から「みんなで悩み、楽しもう」という言葉で締めくくられました。

最後は、富田林市子育て福祉部こども未来室から富田林版「こどもまんなか社会」の推進というタイトルで話題提供いただきました。こども食堂が展開される中で、開設校区の偏りという課題に直面し、市・社協・市民公益活動センターの3者で構成される、得意分野を活かす活動支援体制がつくられました。主に、市がネットワーク・補助金を担当し、社協が後方支援、そして市民公益活動センターが情報発信(SNS)という役割分担で行われていると話されました。

パネルディスカッション

話題提供の後は、上須道徳プロジェクトリーダーのモデレーターのもと、大阪府とむすびえからそれぞれコメントをいただき、パネルディスカッションに入りました。
まず大阪府からは、本日は様々な気付きがあったこと、行政は「目的do」が重視され縦割的な動きとなることが多く、こども食堂や地域の自由な活動実態をサポートできる体制づくりが行政の課題だと話されました。また、こども食堂に関する現場の声・ニーズを聞く機会が少なく、今回このような場があることが実によかったと話されました。

またむずびえの三嶋さんからは、大都市圏でネットワーク構築が困難である中、今回このように大阪でネットワークが立ち上がったのは喜ばしいことだということが述べられました。参加者も、実際のこども食堂運営者よりも、自治体、社会福祉協議会、NPO、大学などの割合が多くとても珍しい構成であり、ネットワークの必要性と機運が伝わるということを話されました。

この後、会場参加者からの質問にそれぞれパネリストが答える形で進行し、こども食堂や地域活動における実践的な課題や工夫が共有され、今後の共創ネットワークの発展を願って閉会となりました。

その後、場所を中之島センター5階「いのち共感ひろば」に移しての名刺交換会にも多くの参加者があり、自己紹介と交流が続きました。