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【開催報告】2024年7月25日(木)、第19回SSIサロン「いのちに寄り添う知―社会課題における古典の役割―」(いのち会議共催)を開催しました。
2024年7月25日(木)、第19回SSIサロン「いのちに寄り添う知―社会課題における古典の役割―」(いのち会議共催)を開催しました。話題提供者の方々含め会場に42名、オンラインで21名が参加しました。以下に概要を報告します。
堂目 卓生(大阪大学総長補佐、社会ソリューションイニシアティブ(SSI)長、「いのち会議」事業実行委員会副委員長):開会挨拶
✓ SSIの設立・理念・活動について説明:いのちの理念とネットワークの広がり
✓ いのち会議:APの開催、いのち宣言のフレームワーク、万博のレガシーに
岡部美香(大阪大学人間科学研究科教授):「<いま・ここ>を裏支えする古層を発掘する―古典と対話するアクチュアルな意味―」
✓ 教育人間学:話された/書かれた(=人間によって生きられた)言葉が主題
✓ 教育人間学的アプローチ①:生きてきた/生きている教育経験を適切に語る言葉の探求→世界の仕組みと力学を編み直すための「言葉を創る」
✓ 教育人間学的アプローチ②:言葉の起源を探る+今使用している言葉の構造と力学を読む←<いま・ここ>の臨床と古層の往還(古典の言葉の力を借りる)
✓ 古典における新しい人間の発見:アリエスの「こども」、フーコーの「狂人」、レヴィ=ストロースの「未開人」など→ロゴスを超えた/外の存在、「話せない」存在
✓ 日本における子ども:童(秩序のなかに正規に位置づいていない人)、常世(「いま・ここ」と異なる外なるカオスなエネルギーのうごめく世界)
✓ 教育人間学的な問い:現在から地続きの未来の担い手としての子どもという観方を超えて、既存の<いま・ここ>になる前のエネルギー状態に還元、過去の中に置いてきた/切り捨ててきたものを探る
→古典との対話:学びほぐし、形をなしてしまった当たり前の枠・境界の溶解=うまく<わからない>状態になれる力(アンラーニングの経験)
橋本美博(日本アスペン研究所):「ヒューマニティーを中心とした“アスペン精神”とその取組み」
✓ 日本アスペン研究所:人間的価値の本質理解のための教育プログラム、知的交流
✓ アスペン精神:大きな変化や変革の時代をよりよい方向に(←1950年代アメリカ)
→「対話の文明」:優れた精神に学び、対話による過去の経験を超えた行動へ
✓ 3つの柱:瑣末化を超える、明確な価値観に裏付けられた実践・深考、対話の文明
→人間的価値の本質を洞察する根拠となる多面的教養(諸理念の体系)、コミュニケーションを基盤とする人間のコミュニティー(相互の理解と信頼)
✓ アスペンの取組:アスペンセミナー(エグゼグティブ、ヤング・エグゼクティブ)
→古典の読み込みを通じて判断・行動につながる「洞察力」「価値軸」の涵養、多様な世界への「視野」の拡大と「理想」の構築、謙虚に「内省」し寛容に「対話」
松浪晴人(大阪大学フォーサイト株式会社):「企業の新価値創造における先知の重要性―新価値創造を学術的・実践的に行っている立場から―」
✓ 行動観察とは:事実→洞察→展望、高齢者密着から浮かび上がる高齢者=サービスを受けたい<サービスを提供したいという動機の発見とビジネスへ
←顕在化したニーズ・機会よりも潜在しているニーズ・機会の発見が重要
✓ 大阪大学フォーサイト株式会社:世界にスケールする新価値の共創
→シーズとニーズの前段階として新価値共創事業と人材育成(本質・問いの発見)
✓ 仮説的推論(演繹、帰納ともことなる、3つめの推論方法):場で観察される事実とアカデミックな知見を統合し、仮説に基づく新価値の創造
✓ Foresight Creation/ Academy:共感のプロセスのフレーム化、プロデューサーとクリエイター(特に前者の重要性に着目)、人間理解の重視(先人の積み重ねた知)
✓ 世の中で求められていること;Skillを下支えするMindset、更にそれを下支えするEthical(道)を重視(←大阪商人)、人間内部から沸き起こる道徳的エネルギー
相良有希子(阪急阪神ホールディングス):「阪急阪神ホールディングスグループにおけるサステナブル経営の推進について~先人の想いを未来につなぐ仕事とは~」
✓ 阪急阪神ホールディングス:都市交通・不動産・エンタテインメント等幅広い事業
✓ 小林一三:優良な住環境ニーズへの対応、より豊かな暮らしの提供
→誰もが豊かになれる郊外型ライフスタイル、劇場・百貨店の経営など
*渋澤栄一:「富は正しい道理でなければ永続できぬ」(智・情・意の三者均衡)
✓ 企業を取り巻く社会環境:サステナビリティへの高い関心、グループの持続的価値向上に取り組む必要性
✓ 「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」:未来にわたり住みたいまち作り
→「地域環境作り」と「次世代の育成」の重視、SDGsトレインの運行
*アンケートから分かるゆめ・まちプロジェクト認知≒グループへの好感度
✓ 「協働」のちから:対等の立場をベース、共感に基づくニーズの把握、自社に出来ない部分はネットワークを「つなぐ」ことで対応(かけ算の効果)
論点
✓ 古典・教養:「人の手によって耕され(culture)」、「形作られてきた(buildung)」力・知識→その結果どのような「いのち」(人間・文化・社会)を形成することを目指すのかが一番重要か→当たり前を超えて、新たな人間/社会像を提示する力
✓ 誰にとっての古典・教養なのか?:近代啓蒙主義の限界、特に多様性の時代における教養・古典のあり方についての考察