活動状況|いのち宣言
【提言】高校生が大学生とともに、SDGsを主題とし、正解があることを自明の前提とせずに、他者と議論しながら自分の「問いを立て」、自分の言葉で社会に向けて未来への提言をできるようにします。
概要
こども基本法の基本理念に、次の事項が挙げられています。
「全ての子どもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」(こども家庭庁HP こども基本法より1))
ここに示されているように、近年、子どもが社会に向けて公に意見を主張する権利を保証しようという動きが表れてきています。その際、子どもの意見を一方的に受け入れるわけではなく、子どもの意見を尊重しつつ、どうその意見を実際の社会に反映するか、子どもどうしで、また子どもと大人が対等に議論することが重要です。
例えば、日本の地方自治体では、地域に住む子どもたちが政策提言をする「子ども議会」が設けられています2)。この試みは、子どもたちが自分の住む地域の大人に向けて未来社会の構想を提言する場です。しかしながら、いまやどの地域であっても、国際的な動向の影響は免れません。だとするならば、住んでいる地域を含みつつ、その地域を超えたグローバルな視野で、社会の課題を思考し議論をする力を涵養する必要があるのではないでしょうか。
大阪大学社会ソリューションイニシアティブのプロジェクトである「自らの生から公共の知を共創する次世代市民の育成に向けた教育の開発3)」は、子どもをはじめとする市民参加型の社会を構想することをめざし、子どもどうし、もしくは、子どもと大人との対話・議論を通じて、もはや現実に即していないと思われるような従来のカテゴリー区分を問い直し、よりよい社会を市民が構想・構築することをめざすものです。その一環として、「高校生を対象に、グローバルな観点で、かつ(一つの)正解があることを自明の前提とせずに問いを立て、他者とともに議論をするという探究のプロセスを体験する企画「SDGsのその先をアカデミックに探究しよう!」を立案・実施しています。
SDGs(持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない」ことをモットーに、国際連合によって「私たちみんな」がこの先も地球で暮らし続けるために達成すべき目標として採択されたものです。「私たちみんな」というからには、未来社会の中心的な担い手である高校生の意見や願いも考慮される必要があります。果たして、SDGsの目標は、高校生が思い描き、こうあればよいと願う未来に応答してきた/いるのでしょうか。もし、彼(女)らの意見や願いが十分に反映されていないとすれば、その目標は果たして持続可能だといえるのでしょうか。
「SDGsのその先をアカデミックに探究しよう!」は3日間の集中セミナーです。ここで高校生は、学術的な方法論に則りつつ、グローバルな視点から、自分の言葉と思考力で、また他者と議論するなかでSDGsを問い直し、さらにSDGsが目標とする2030年をこえ、2050年を見通して未来社会を構想することを試みます。1日目は、SDGsが誕生した経緯について調査し、SDGs の存在意義をいま一度確認します。2日目は、前日の調べ学習を踏まえて、高校生どうしや大学生とともに議論をしながらSDGsの目標やターゲットを批判的に捉え直します。そして3日目は、大阪大学の総合図書館やさまざまな論文検索エンジンで資料を収集しながら、自分の言葉と思考力で未来社会を構想します。いのち会議は、ここで構想した内容を「いのちの声」として公表してまいります。
この企画は、毎年開催される予定です。そのつど、20~30人の高校生が、自分たちの望む未来社会を構想し、社会に向けて提言します。この提言にどう応えるかが、いまの大人たちと、これから大人になる高校生・大学生に問われています。高校生の「いのちの声」は、「私たちみんな」が協働して未来社会を構築する第一歩となるのです。
参考情報
1) こども基本法に基づくこども施策の策定等へのこどもの意見の反映について(自治体向けQ&A)
https://www.cfa.go.jp/laws/kodomo-kihon-iken
2)「子ども議会」、若い世代の声を政策に 人口減少など課題に直面する自治体
https://www.asahi.com/articles/DA3S15998392.html?linkType=article&id=DA3S15998392&ref=mor_mail_kaiin_newspaper_20240731
3) SSI 基幹プロジェクト「自らの生から公共の知を共創する次世代市民の育成に向けた教育の開発」
https://kyonin.hus.osaka-u.ac.jp/report/nextgeneration/
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