活動状況|いのち宣言
【提言】オープンで民主的な社会の基盤である、市民社会の自由な言論・活動のための社会空間を守ります。
概要
「市民社会スペース」とは、市民が自由な議論や活動を行うための社会空間であり、様々な社会的な活動を行う環境や機会を指します。今、世界的に、このスペースが狭まりつつあり、大きな問題となっています。この市民社会スペースの概念は、「持続可能な開発目標(SDGs)」、特に目標16(平和と公正)とも密接に関係があり、目標16の「12のターゲット」の中で、具体的に市民社会スペースに関わる自由な活動を保障することが定められています。
日本の市民社会の取組としては、国内外で市民社会スペースの縮小に歯止めをかけるべく、例えばJANIC(国際協力NGOセンター)の一部門であるTHINK Lobby、NANCiS(市民社会スペースNGOアクションネットワーク)等が協働し、アジアのパートナー団体との活動を通じて、アジア全体での市民社会スペースの確保に向けた活動を行っています。アジアでの取り組みの事例としては、様々なNGOと共に、市民社会スペースに関する調査、研修・ワークショップの開催、ソーシャルメディア・キャンペーンの展開、政府への政策提言、「市民社会スペースに関する市民憲章」の作成、これらの成果を共有する、「東京デモクラシーフォーラム」等を開催しています。
世界の市民社会スペースの動向を調査している国際NGO、CIVICUSは、毎年、CIVICUS Monitorとして、その調査結果を報告しています。
出所:CIVICUS Monitor 2024
このCIVICUS Monitor によれば、市民社会スペースは年々、狭まっており、世界の約3分の1の人びとが「閉ざされた(closed)1) 」国々で生活しており、この傾向は新たな指標による調査を開始した2018年以降、最高の数値になりました。また世界では、「開かれた国(open)」として、わずか約2%の人びとが何の制約を受けずに、市民社会スペースが保障されていますが、この数値も下がってきています。 アジアで「開かれた」国・地域は台湾のみであり、日本は、韓国、東ティモール、モンゴルと同様に「やや狭まっている(narrowed)」にランクされています。この理由には、例えば日本の「秘密保護法」では、対象となる範囲が広く、その基準が曖昧で当局の裁量性が高く、情報を管理している行政機関の判断により、何でも「特定秘密」になる可能性が高いことが指摘されています。またメディア規制も、一部の政治家等による報道内容に対する圧力をかける発言が時々散見されることも、このランク付けになっているものと思われます。
例えば、 バングラデシュでは、2024年7月、公務員採用の優遇枠をなくすよう求める学生らのデモ隊と治安部隊の衝突を巡り、多くの逮捕者と犠牲者が出ました。もともとバングラデシュは、CIVICUSによれれば、閉ざされた国(closed)にランクされ、日常的に政府当局は、市民の自由な活動を規制する政策を実施し、政府の政策に批判する人に対し、恣意的な逮捕や拷問を繰り返しています。また政府は批判的なジャーナリストに圧力をかけ、メディアを閉鎖に追い込んでいます。
最近は、インターネットとソーシャルメディアの普及により、市民が情報を収集し意見を発信する手段が増え、オンラインでの署名活動やキャンペーンが活発化しています。人権、環境問題、貧困対策、恣意的な逮捕・失踪など、さまざまな社会問題に取り組む市民団体やNPOが情報を拡散するようになりました。しかし一方では、それ故に、政府による検閲や言論統制が強くなり、市民が自由に意見を表明することが困難になりつつあります。
市民社会スペースを健全に維持し発展させるためには、これらの課題に対処し、市民が自由かつ安全に意見を表明し行動できる環境を整えることが重要です。そのためには、いのち会議としても、引き続き、市民社会同士が国境を超え、国連等の国際場裏での存在感を高めるために、Forus2) やアジア開発連盟(ADA)3)等とのグローバルなネットワークに参画し、特にアジアの市民社会組織との連携をさらに強め、能力開発、情報発信、政府への提言活動等、様々な協力を行うことが重要と考えています。
参考情報
1) CIVICUS Monitorの評価基準 https://monitor.civicus.org/about/how-it-works/ratings/
2) Forus団体紹介 https://www.forus-international.org/en/
3) アジア開発連盟(ADA)団体紹介 https://ada2030.org/index.php
・我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402_2.pdf
・Monitor 2023: https://monitor.civicus.org/
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