「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

活動状況|アクションパネル

2023年12月1日(金)、【ポストSDGsセミナー】いのち輝く未来社会を構想する~SDGs達成のための視点といのち会議~を開催しました

12月1日(金)、【ポストSDGsセミナー】いのち輝く未来社会を構想する~SDGs達成のための視点といのち会議~を、大阪大学中之島センター「いのち共感ひろば」とオンラインのハイブリッドで開催しました。話題提供者の方々含め会場には30名、オンラインには97名が集まりました。以下に、概要を報告します。


イベント概要

日時
2023年12月1日(金) 14:00~17:00


場所:
大阪大学中之島センター いのち共感ひろば 及び オンライン(zoom)


企画趣旨:
2015年の「国連持続可能な開発サミット」でSDGsが採択されて8年が経過し、SDGsの認知が広がるとともに様々な取組みが行われるようになりました。その一方で、新型コロナウイルス蔓延、ウクライナ、パレスチナなどの紛争、エネルギー・食料価格の高騰、人権問題や貧困格差の拡大、気候変動問題など、世界は多くの困難を経験するとともに、様々なアクターがその対応に追われています。

そして2023年3月24日、すべての「いのち」が輝く新しい時代を切り拓くために、一人ひとりが地球の上で生かされている「いのち」の意識に立ってつながり、声を上げ、聞き合い、考え、話し、一つの声にしてグローバルなムーブメントにつなげていく場として「いのち会議」が立ち上がり、2025年の大阪・関西万博では、様々な国の政府、企業、アカデミア、市民団体等が「いのち輝く未来社会」への取組みを持ち寄り、SDGs達成とその先の未来を描き出そうとしています。

SDGsの達成期限とされる2030年まで残り6年余となろうとする今、我々の目指す「いのち輝く未来社会」とはどのような社会なのか?その実現にはどのような課題があり、いかに活動し連携していく必要があるのか?

本セミナーでは、産官学民の様々な参加者が集まり、現在における国内外のSDGsの進捗と課題、取り組みのあり方について議論し、今後の協働のさらなる加速を目指したいと考えています。


実施体制:
主催:関西SDGsプラットフォーム大学分科会
共催:大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)及び「いのち会議」市民部門


開会挨拶 堂目卓生(大阪大学 社会ソリューションイニシアティブ長、大阪大学総長補佐、いのち会議市民部門長)

✓大学分科会の概要・活動とポストSDGsプロジェクト(PSP)の位置づけの説明
✓いのちの理念(CapableとVulnerable)、いのち宣言・いのち会議の説明

峯 陽一(国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所 所長):「人間の尊厳とSDGs―『誰も取り残されない社会』をめざして」

✓尊厳について:自分と他人のいのちの尊重、誰も取り残してはいけない
→近年の岸田首相のスピーチにもこめられた人間の尊厳はポストSDGs構想の鍵
✓人間の安全保証の核としての尊厳(UNDPの報告書):一部指標を除いて日本社会の達成状況は十分だが、「誰も取り残されない」はどうか?→地域を見る必要性
→人間の安全保障指標:脱集計化、主観と客観、尊厳をはかるの3つの方針
✓都道府県単位での人間の安全保障指数発表(2019);客観データ+主観アンケート
→自己充実度・連携性など主観アンケート結果と客観データの乖離
→『SDGsと日本』としての調査結果を日本語・英語で発表、世界的にインパクト
✓さらに都道府県→市町村単位に調査:NPOと共同して調査、地域単位の指標作成
→宮城県:地域単位での格差、指標作成を通した市町村毎の課題が明確に
✓尊厳指標:自己を大切にする「アンケート+客観データ(自殺率など)を利用して宮城県ではK指標として数値化」+他者を大切にする「J指標(地域の連帯)」+民主的な制度「自尊心・主体性・参画、H指標(公への信頼・ジェンダー)」
→『SDGsと地域社会』:宮城モデルとして出版、愛知でも進行中
✓人間性(マンデラの「ウブントゥ」)を満たした社会:人と人の間で生きる、地域社会で支え合うことがSDGsを更に進めるための鍵。地域SDGs推進の重要性

ハジアリッチ 秀子(国連開発計画(UNDP)駐日代表):「誰ひとり取り残されない世界は可能か?」

✓UNDP(国連開発計画):国連の開発協力機関、政策提言やプロジェクト実施
✓SDGs17:グローバル、国、地方レベルでの包括的なパートナーシップ構築の重視
✓SDGs達成状況:順調なのは12%のみ、半分以上が不十分で30%が停滞
✓SDGsのつながり:ゴールは相互に影響、1国の行動が他国にも波及
←気候変動(SDGs13)はSDGs1-17(水、企業活動など)の広範囲に影響
*各国の政策文書におけるSDGsゴール間のつながりを可視化する分析も
✓SDGs16:平和と公正、人間の尊厳→実は日本政府が力を入れている分野
←20億人以上が紛争地域に住んでおり、2億5千万人以上は人道支援が必要
✓「人道」「開発」「平和」の連携:短期的な難民受け入れ+中長期的な開発支援
→「平和の取組」:難民発生の根本的な紛争解決・予防に向けた自立支援の重視
←スーダンでの事例:難民を受け入れる側のコミュニティの悲惨さ(紛争の要因に)→難民と受け入れ側の協議促進、コットン販売のスキーム確立支援。現地の人たちとコミュニティを作って政治・インフラ体制を支援することが重要

パネルディスカッション

話題提供:佐城 永修(兵庫県企画部 SDGs推進課長):『兵庫県のSDGsの取組』

✓地方自治体の先導的役割:地域の課題を意識した取組→グローバルな連携
✓兵庫版SDGsの推進:2022年に推進本部設立、取組の深化・見える化・発信強化
⇔企業のSDGsの取り組み・認知度が低い現状の変革(特に中小企業)
✓推進本部の立ち上げとSDGs Hub設立による産官学民連携推進
→学生と企業がPR推進、公民共創PJ(SDGs認証事業)、SDGs Weekなど
✓SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業への選定:ひょうごフィールドパビリオンを通じて地域価値の向上、シビックプライド醸成を目指す

話題提供:鈴木 千花(認定NPO法人テラ・ルネッサンス フェロー):『「誰一人取り残されない」の解像度を上げる』

✓ジャパンユースプラットフォーム事務局長としてSDGs推進円卓会議へも参画、大学休学→ウガンダに駐在して現場支援活動
✓「持続可能な開発」:「将来世代が自らの欲求を充足する能力を損なうことなく」
→若者の意識向上だけでなく、若者を含めて多様な人々がステークホルダーとして政策意思決定の場に参画できることを重視(MGoS)
✓「誰一人取り残されない社会」を目指す:平和と公正(SDGs16)の重視。若者の行動変容や現場支援への関与によって国益を超えた現場のニーズを掴みつつ、人間の安全保障など国際的に合意されたルールに基づいて若者など多様なステークホルダーが意思決定のプロセスに参画できるアプローチの構築が重要

ディスカッション

●コロナや紛争など現在の文脈の中でSDGsを進める意義
峯:自然を超えて人類の存続自体が問われる中で、人間の「類的」な責任が問われているからこそ人間中心にしつつ、SDGsというプラットフォームが重要。多様な人々が参画できるプラットフォームとして機能するためにも重要
ハジアリッチ:途上国中心のMDGs→先進国も関わるSDGs。ジェンダーや環境保護など、日本など先進国が途上国から学ぶことがある。世代・国を超えた連帯、責任感の共有
佐城:女性の政治参画、職員比率などの問題の残存→SDGsを通して説明しやすさ
鈴木:問題・課題の複合性を捉えて解決を目指すことがSDGsの意義。また、誰が取り残されているのか細かく指標・達成状況をみることで可視化も
●すべてのいのちが輝く社会を構築するのを妨げるものは何か?
鈴木:誰一人取り残されない社会の仕組みの構築と背景の分析が重要。個人の意識による行動変容を超えた問題(例えば日程調整などでも平日に無意識に設定)であり、社会のシステム・制度自体を大胆に改革することが重要だろう
佐城:無関心、自分事として捉えられない状況。地道な取組を続けて行く
ハジアリッチ:無関心・諦めが一番恐ろしい
峯:上から目線の悪影響(e.g. アメリカのトランプ現象)。制度と態度の両方
●鈴木:対話を通して関心を集めることが出来たと感じた成功体験はあるか
ハリアジッチ:上から目線のまずさと同時に引きすぎるのもダメ。例えば関西の女性のリーダーとしての関与率の高さ
峯:県民性の違いという多様性(東京者への冷たい目)もある中で、地域性を超えた交流促進、刺激をしあうことも重要。地域SDGsの取組を通して促進したい
ハリアジッチ:現地にいる人を通して発言してもらうなどの工夫も

【フロアから】
●質問1:ムーンショット、ワクワクする感覚の重要性。変革としてのSDGsであって、構えすぎない事が重要ではないか?
峯:個別にやると覚えきれないくらい多いゴール・目標があるなかで、全部覚えるのは大変なので、自分の関心を強く引ける、しかも多くの目標と繋がるハブとなるような目標を見つけることが重要か
ハリアジッチ:若者の企業プロジェクトと関わる中で、わくわく感と社会貢献をしているという充実感を感じる若者をみてきた。そうした人たちを支援することも含めて切り口はあるだろう
●質問2:途上国と先進国が交えて学び合えるSDGsの一方で、日本では途上国以上に未だに進まないのはなぜか(例えば女性の役員比率など)?
鈴木:(ルワンダはジェノサイドを通じて男性死亡率が高いという背景もあることを前置きした上で)女性比率が低いということをみるだけでなくて、なぜ女性比率が低いのか、発言機会が少ないのかその背景について考えて、その背景自体をシステム・制度レベルから見直すことが今後重要だろう
峯:態度を重視する一方で制度をいじるのを嫌がる日本の風土だが、社会的なショック療法として日本全体で取り組んでいくことを試みる必要が出てきているか
ハリアジッチ:メリトクラシーの重要性もあり、トレーニング段階で男女半々にするなど、機会の平等と結果の平等の両方の考え方がある
●質問3:誰一人取り残さないには「悪人」も含まれるのか?
峯:人間の尊厳の考え方に基づくと究極的に含まれると思う
ハリアジッチ:法の支配の元では罪人や死人の権利もあるので含まれるだろう
鈴木:法務省が絡む人権問題も多い中で、犯罪者の人権にも考慮が必要だろう
●質問4:自分の果たしたい役割は?
峯:具体的なプロジェクトの中で一緒に汗を流すこと、現場をみる、現場の人の声を聞くことの重要性
ハリアジッチ:企業の方など大きな影響を持つ人たちと一緒になって進めていく
佐城:地道にやっていくしかない中で、HPなどを通じて気付きを与えていく
鈴木:無関心の打破のために相手を選ばず絶え間ない対話を続けると同時に、制度的な変革に結び付けられるようなアドボカシー活動を続けていきたい

総合コメント:喜多 隆 (神戸大学 副学長)

✓非常に熱のこもった議論であり、議論の深さ、幅も広く大変勉強させていただいた。
✓先週の神戸大学のフォーラムでは、世界最古の会社である金剛組からの話で、組織の持続性においてイノベーションや仕組みよりも「伝統や共通の価値観を守り、それに向かって協力することが重要」との示唆があった。
✓SDGsの進行を妨げる要因についての議論では、共通の価値観を確立することが不可欠であると考えている、特に文化の視点が不足している中で、文化の要素をうまく組み込み、新しいアイデアを生み出して17のゴールに展開することで社会にも文化として根付くのではないか。
✓引き続き、色々なテーマについて議論を続けられることを期待している。

【論点】

✓意識・態度の変革だけで難しい中で、根本的なシステム・制度自体を変革する意識の重要性。ただ、それをうまく進めるためにはどのような方針が必要かは今後さらなる議論が必要だろう
→その際に課題を複合的・重層的に捉えるSDGsの構造は役に立つだろう
✓無関心という最大の敵と戦うために:制度的な変革もあるし、同時に地域性・県民性のような様々に異なる状況をつぶさに観察しつつ、同時に地域間での交流による気付きの連鎖のような状況を生み出そうとする努力
✓SDGsの有用性:上二つの論点とも繋がる部分であるが、多くの目標による精緻なモニタリング・比較が可能になると同時に、複合的・重層的に課題を捉える目を通して自分事化できる課題を見つけられると同時に、それを個人・地域レベルの課題からグローバルな課題へと結び付け交流することを可能にするプラットフォームであること→SDGsについて説明・取り組む上で自分事化+交流・波及の二つの局面を意識しておくことの重要性を再確認