「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

活動状況|いのち宣言

【提言】「鎮守の森」「八百万の神様」といった日本の伝統文化における自然観を再発見し、生物多様性や生態系の保全、人間と自然の共生のあり方など、現代的な課題の解決につなげていきましょう。

概要

一般に“地球規模の環境問題”として論じられている話題には大きく二つあり、それは温暖化あるいは「気候変動」に関するテーマと、生物種の減少や生態系の劣化など「生物多様性」に関するテーマです。これら2つのテーマのうち、これまで社会的な関心が特に高いのは前者でしたが、近年では後者(生物多様性、生態系)への関心も広がっています。

そうした中で、一つの視点として浮かび上がるのは、この「生物多様性」と日本の伝統文化における「八百万(やおよろず)の神様」という表現との関わりです。

「八百万の神様」という言葉は、大きく言えば自然の中に、象徴的な意味での無数の“神様”が存在しているという自然観を表わしています。しかも「鎮守の森」という言葉もあるように、それは私たち人間にとって大切な、ともに共生していくべき(あるいは「畏敬」すべき)存在であることが含意されています。だとすれば「生物多様性」が重要だという考え方は、まさにこうした日本の伝統文化における自然観とつながるのではないでしょうか。

ちなみに生物多様性については、2022年12月に採択された新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を受けて、日本においても「生物多様性国家戦略2023-2030」がまとめられました(2023年3月)。興味深いことに、本戦略においても以下のような文章が盛り込まれているのです。

「鎮守の森、八百万の神に象徴されるような・・・我が国における人と自然との共生の考え方や、生物多様性の豊かさに根差した地域文化(伝統行事、食文化、地場産業など)を守り」「自然がもたらす文化的・精神的な豊かさや、・・・人と自然の共生という自然観の継承を、様々な機会を通じて発信し、・・・地域における生物多様性の保全活動を促進する。」

思えば、国連のいわゆるSDGs(持続可能な発展目標)での17項目には「文化」という項目は入っていません。これは、SDGsの17項目はいわば是正ないし解決されるべき「問題」や「課題」を列挙したものであり、これに対して「文化」はそれ自体としてポジティブなもので、「問題」「課題」という性格のものではないためです。しかし文化という要因は、生態系の保全や自然保護などの課題に取り組むにあたって、その「モチベーション」としても非常に重要なものと考えられます。

たとえば「鎮守の森コミュニティ研究所」では、鎮守の森に象徴される日本の伝統文化と自然エネルギー、心身の癒し、地域再生等の現代的な課題を結びつけた活動を進めています。一例として、ユネスコの無形文化遺産にも登録された夜祭で知られる秩父神社のある埼玉県秩父市において、地元住民と連携して小水力発電を導入し、その収益を近辺の里山整備事業などの環境保全活動にあてるという活動が行われており(令和4年緑化推進運動功労者内閣総理大臣賞受賞)、そこでは秩父神社の御神体である武甲山など、秩父の伝統文化や地元の自然に対する愛着が保全活動の重要な動機づけとなっています。

こうした活動等を通じて、2030年までには生物多様性・生態系の保全と日本の伝統文化の関連性が広く認知され、人々がそうした認識を踏まえた何らかのアクションを身近な地域等で行うようになり、さらに2050年には、以上のような活動等を踏まえて、生物多様性・生態系が回復され人間と自然が共生する社会が実現することが期待されます。

いのち会議は、現在危機に瀕している生物多様性や生態系の保全を実現していくために、「鎮守の森」「八百万の神様」といった日本の伝統文化における自然観の意義を再発見し、人間と自然の共生をめぐる現代的な課題の解決につながる活動を推進してまいります。

参考情報

鎮守の森コミュニティ研究所 (c-chinju.org)
京都大学 人と社会の未来研究院

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