「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

活動状況|いのち宣言

【提言】やっかいな問題を解くために、所属や分野を越える「つながり」を作る「ハブ」を見出し、活躍できるようにしよう。 

概要

近年、NPOやNGO、協同組合など、民間の非営利・協同型の組織から構成されるサードセクターが、様々な社会的課題の解決に関与しています。彼らは企業や行政と協働しながら、環境問題への解決策、難民の支援、オルタナティブな教育、生活困窮者の支援など、一筋縄では解けない社会的課題である「やっかいな問題」の解決をめざす様々な活動を実施しています。2011年に起こった東日本大震災においても同様でしたが、活動の活発さや効果は、被災地の中でも地域差が見られました。うまくいっている地域もあれば、そうでない地域もある。どうも、彼らの社会ネットワーク、つまりは人と人のつながりが重要な要因となっているようでした。

彼らの社会ネットワークの構造を以下のようなインタビュー調査で調べました。あるサードセクターのキーパーソンに、「東日本大震災でお世話になっていたり、信頼していたりする人を最大10人教えてくれ。行政・営利企業・サードセクターのどこに所属していてもいいし、震災前からのつながりでも、震災後のつながりでもいい。被災地に住んでいる人でも被災地外の人でもいい」と聞きます。この質問で把握できた人のうち、震災後に被災地に住んだことがあるサードセクターの人に、またインタビューを行います。これを80人繰り返しました。

この調査では、80人に最大10人ずつ、つながりを聞くわけですから、最大800人のキーパーソンが把握できることになります。しかし実際には、把握できたキーパーソンは459人にとどまりました(図)。ほとんどの方は10名ずつ答えてくれたので、複数の人から指名を受ける人がいたわけです。

図 サードセクターのキーパーソンの社会ネットワーク(2016年6月23日)
※1つの正円は1人の人物を表し、正円の大きさは指名された数を反映している。正円は地域ごとに楕円状に配置している。正円同士をつないでいる線が社会ネットワーク。資料 菅野拓(2020)

このサードセクターの社会ネットワークの分析から、特徴的な性質が確認できました。多くの人は1人からしか指名されていませんが、ごくたまにたくさんの人から指名される人=「ハブ」がいます。多くのつながりを持つハブがごく少数存在するネットワークは「スケールフリー・ネットワーク」と呼ばれ、ランダムな攻撃に対し頑強で情報伝播が早いという構造特性を持ちます。スケールフリー・ネットワークの代表はインターネットで、大規模なリンクを持つ検索サイト(Googleなど)がハブとなり、わずか数クリックのうちに、世界に10億以上あるウェブサイトの中から、目的にかなうウェブサイトにたどり着くことができます。

サードセクターの社会ネットワークも、ハブが存在することから情報の伝播性が高く、効率的に知識や資源のシェアが可能でした。つまり、ハブは問題に応じて、人と人とをつなぐことで、知識や資源を動員する要となっているということです。問題を明確化させ、さまざまな個人や組織が持っている知識や資源をつなぎ合わせ、解決策を生み出すことを、ハブは促進しています。

私たちは、ともすると、問題自体がはっきりとわかり解決策が見えている課題ばかりを「選択と集中」によって解決しようとします。結果、問題自体が不明瞭で解決策もよくわからないやっかいな問題を解くことが置き去りにされます。いのち会議は、やっかいな問題を効果的に解決し続けるために、政府・民間企業・サードセクターの組織と連携し、ハブとなる人の見出だし方や、ハブが活躍できる組織の条件を明らかにするとともに、2030までにハブがその役割を十分果たせる環境を形成することを政府の政策やSDGsのその後のアジェンダに位置づけるよう様々なステークホルダーに働きかけます。

参考情報

https://ssir-j.org/networks_as_a_way_to_solve_wicked_problems/

・菅野拓(2020)『つながりが生み出すイノベーション ― サードセクターと創発する地域―』ナカニシヤ出版 

・菅野拓(2022)「ネットワークをつむぐ ― 人と人とをつなぐ人の作用」、堂目卓生・山崎吾郎編『やっかいな問題はみんなで解く』世界思想社、所収 

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