「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

活動状況|いのち宣言

【提言】自然がヒトからかけられている迷惑を「いのちの声」として目に見えるようにする。それをヒトの考え方や行動を変えるきっかけにする。日本での実践を力に世界の仕組みにしていく。

概要

すべての生きるもの、エネルギーを有するものに宿る「いのち」。それらのすべてが輝く未来になるためには、「ヒト」を中心に社会を考えている発想と行動を変えていかなければいけません。それも世界中で。容易なことではありません。

既に頭脳を活用して物質的繁栄と栄養状態の改善、長寿化を企図してきた「ヒト」の数は80億人を超え、単一個体として10番目の多さ、トップのコウヨウチョウ150億羽の半分以上となっています。重さでいうと3.9億トン、野生の哺乳類(0.6億トン)の6倍以上です。さらに、ヒトのために存在している家畜は6.3億トン(そのうち牛が3分の2)にもなっています。そのために生物の生息可能な陸地(陸地の7割程度)の半分弱が、過去1万年で森林や野生の草原から耕作地(生息可能地の14%)と家畜のための牧草地(生息可能地の31%)に変えられています。ヒトの活動がいかに生態系に負荷をかけているのか実感できます。

では、どうすればいいのか?ヒトの数を急に減らすわけにはいかないとすれば、ヒトが意識改革をして、できるだけ生態系に迷惑をかけないようにするしかありません。そうした意識改革の重要な要素は、物質的繁栄を中心に据えてきた経済のあり方を見直すことです。主として資本と労働だけを生産要素として構築されてきた経済学、拝金主義的な色彩の強い現代の資本主義を根底から見直さないといけません。

その第一歩として始めたのが、拝金主義的な金融資本主義のアンチテーゼを作ることであり、それが金融資本以外の様々な要素を改めて重視すべきという「知的資産経営」の概念づくり1)です。この考え方を世界に伝え、紆余曲折を経て作り上げたのが「統合報告」の枠組み(2013)であり、その中では、金融資本、製造資本などの目に見える資本以外に、知的資本、社会関係資本、人的資本、さらには自然資本が明確に示されています。この流れが気候変動問題への意識の高まりとともにSDGsやESG投資などと結びつき、世界の人々の行動に若干の変化がみられてきました。IFRS(国際財務報告基準)財団に作られたISSB(国際サステナビリティ標準審議会)の活動では、2026年までに生物多様性に関する開示基準も作られることになりました。

しかし、SDGsの17項目でさえ、14「海の豊かさを守ろう」、15「陸の豊かさも守ろう」以外は、すべてヒトの生活や暮らしや社会をどうしたいのか、という観点から語られています。ヒトの行動が重要であることは間違いないのですが、環境や生態系の「保全」という考え方自体、ヒトがそれらを制御できるという、上から目線の発想が感じられます。

そうではなくて、「生態系(いのち)の犠牲」というところから発想し、「いのちの声」を重視するところから考えると、いろんなアイディアを思いつくことができそうで、日本人はそういうことが得意です。もともと自然への畏怖があり、ヒトの力ではどうにもならないものがたくさん存在することを知り、それが自然信仰や八百万の神の思想の源にもなっていますから。しかし、日本の考え方だけ主張しても、世界は受け容れません。世界の各地の似たような文化や考え方を見つけ、具体的な活動で、世界をなるほど、と思わせる。そうした日本らしい考え方を活かしながらbeyond SDGsを作り、具体的に活動していきましょう。

「統合報告」のように日本発の発想を世界のルールにしてきた例はあります。気候変動対策のCO2排出量の削減のような見える化のために、ISSBのような標準を作ることに加えて、「いのちの声」を伝えるツールを作って使っていきましょう。例えば「環境DNA」2)です。時々刻々変化するその場所の周辺の生態系の様子が目に見えるようになるツールです。日常生活に近いところでは、例えば、肉の消費を減らして、家畜のために切り拓いた牧草地を森林や草原に戻せる面積を計算するツールも作れそうです。食品ロスのような無駄を減らして減少する自然への負荷を可視化するツールもあってもよいのではないでしょうか。

いのち会議は、そんなツール群を作り、無理なく、納得づくでヒトの行動を変えていく、世界の仕組みづくりを行っていきます。

参考情報

1) 産業構造審議会中間報告書2005
 http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/pdf/InterimReport-jpn.pdf
2) 環境DNA学会HP
 https://ednasociety.org/
・経済産業省(2005), 知的資産経営の開示ガイドライン, 2005
 https://www.meti.go.jp/polic y/intellectual_assets/pdf/2-guideline-jpn.pdf
・IIRC (2021) International <IR> Framework, January 2021=改訂版
 https://integratedreporting.org/resource/international-ir-framework/


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