「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

活動状況|いのち宣言

【提言】災害に特別に備えることだけでなく、平時の法制度に災害時のことをあらかじめ規定することで、「フェーズフリーな法制度」に変えよう。 

概要

様々な社会的課題のなかでも災害はある特殊性をもちます。環境問題・貧困・高齢化といった社会的課題は、あらゆるところに、いつも存在しているため、様々な活動が生まれやすいし、問題のある法制度の改正を迫る世論も生じやすいです。しかし、災害はある地域にたまにしか起こらないため、一部の人や地域の問題にとどまりやすいです。このような「ある地域にたまにしか起こらない」という特性を持つ社会的課題である災害が頻発するのが、災害大国と呼ばれる日本です。 

災害大国であるのだから、当然、日本社会は災害対応が得意なのだと言いたいところですが、半分あたりで半分はずれです。得意なのはハード整備で、道路や河川、学校などは、災害でダメージを受けても壊れにくく、復旧することも基本的に得意です。しかし、日本社会は被災者支援が得意ではありません。一例をあげると、よくある避難所の生活環境水準は、難民支援などの人道援助の国際基準をはるかに下回り、長い間、混乱は継続しています。 

日本社会が防災・災害対応におけるハード整備を得意とする理由は簡単です。防災・災害対応におけるハード整備は、国や地方自治体が平時に実施している道路を整備したり学校を建てたりすることを、強化したり、早回ししたりして行っているからです。あらかじめ災害に備えたハード整備をするように促す法制度があり、いざ災害が起こると平時のプロが早回しして回復するのです。

日本社会が被災者支援を得意としない理由は、防災・災害対応におけるハード整備の真逆です。人の暮らしを支える様々な財やサービスは、平時は営利の事業者が多数参画する市場や、政府が資金を出すもののサービスは利用者が選択する準市場を通して民間団体が供給しています(図)。

図 被災者支援が混乱する制度構造 
資料 菅野(2021)をもとに作成 

例えば、食料を得ようと思うと人はスーパーマーケットやレストランに行くでしょうし、家を買ったり借りたりしようと思うと、人は不動産会社に行くことが多いでしょう。しかし、災害時には基本的な支援者は行政、特に地方自治体になります。地方自治体職員から見れば大きな災害対応は一生に一度あるかないかの経験です。慣れない人が行うのですからうまくいくわけはありません。これが災害大国日本で被災者支援の混乱がずっと続く理由です。 

「ある地域にたまにしか起こらない」災害は、人の暮らしの全部面を襲うので、財やサービスを平時から供給している組織に、防災や災害対応に参画してもらうことが重要です。また使い慣れた法制度にあらかじめ防災や災害対応のことを規定しておき、実際に災害が起きたら使い慣れた法制度を用いて対応することも重要です。身のまわりにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立てることができるように設計しておくという考え方を、「フェーズフリー」と呼びます。日本では、2018年に一般社団法人フェーズフリー協会が設立され、平常時と災害時の二分法から自由な世界の構築が進められています。災害に特別に備えることだけでなく、平時の法制度に災害時のことをあらかじめ規定することで、「フェーズフリーな法制度」に変えなければなりません。 

いのち会議は、このことを念頭に置き、民間企業・サードセクターの組織と協働しつつ政府・自治体に働きかけ、専門性をもつアクターが被災者支援を効果的に実施できるモデル的な取り組みを実施し、災害に対応する仕組みを地域共生社会づくりの重要な要素であることを日本社会として確認したうえで、2030年までにフェーズフリーな法制度が全国に普及することを目指します。 

参考情報

https://phasefree.or.jp
・菅野拓(2021)『災害対応ガバナンス―被災者支援の混乱を止める―』ナカニシヤ出版 

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