活動状況|いのち宣言
【提言】プラスチックを、使用後もごみになることなく再びプラスチックになるような繰り返しリサイクルできる製品にし、資源を守り循環させる社会を作ろう
概要
ポリエチレン、ポリプロピレンをはじめとするプラスチックは安価、軽量、丈夫で腐らないという特徴を活かし、20世紀後半から著しく普及しました。プラスチックは幅広い産業分野で利用され、私達の生活に潤いを与えてきました。
プラスチックって、どこが優れているのでしょうか。最大の特徴は軽さで、鉄の約8分の1です。また、透明な製品が作れ、ペットボトルは落としても割れない強度があります。透明な軟質プラスチックフィルムは食品の包装材料(包材)に用いられ、生鮮食品をはじめとして多様な食品の包材として重宝されます。一方で卵パックには硬質プラスチックが用いられ、中身が守られます。
プラスチック製品が安価に供給されるのは、プラスチックの大量製造のみならず、高速成形技術に依る部分も大きいとされます。さらにフィルムを貼り合わせる技術によりレトルトカレー等の食品包材として用途を大きく拡張し、食の安全に不可欠となりました。このようにプラスチック製品に関わる多様な技術が急速に発展することで、私達は意識することなくプラスチックの恩恵を享受しています。
一方で、この間の急速な技術革新の中で廃プラスチックに関する課題がなおざりにされてきました。プラスチックの安定性が製品として重要である一方、プラスチックの多くは環境中で分解しません。不注意に捨てられたプラスチックが海洋に流出し、海洋プラスチックごみとして社会問題化しています。マイクロプラスチックは海洋のみならず、大気中にも多く、健康に対する懸念が高まっています。
では、プラスチックの問題をどのように解決すれば良いのでしょうか。残念ながら、現状では抜本的な解決策が無く、プラスチックの資源循環に向けた戦略や、そのための技術開発も未だ基盤レベルであり、広範囲に社会実装されるのはかなり先と思われます。しかし、海洋プラスチックごみをはじめとする環境対策は何らかの手を早期に打ち、少しでも環境を改善するアクションを取ることが社会的に求められています。そのため、プラスチック問題の解決を議論する際には、①時間軸、②スケール、③戦略を分ける必要があります。海洋プラスチックごみをはじめとしてプラスチックに関わる諸問題は緊急に取組むべきですが、これら三つのことを意識しないと方向性が定まりません。
ごみを出さない資源の完全循環に向けて未来のプラスチックのあるべき姿として、全てのプラスチック製品にリサイクル性が搭載され、ごみをごみでなくし、再びプラスチックに戻すことが求められます。
プラスチック問題は社会事情が複雑に絡み合っていて、今すぐには私達にできることには限りがあります。しかし、環境を意識したプラスチックに対する対策を“できることから一歩ずつ”推進しましょう。
例えばプラスチックのリサイクルをアップサイクル製品につなげるなど、環境プラスチック素材の導入はプラスチック問題の解決、特に市民レベルでのプラスチック問題への関心の高まりにつながります。
大阪大学社会ソリューションイニシアティブのプロジェクト「⼤阪湾プラごみゼロを⽬指す資源循環共創拠点」(代表 宇山浩教授)では、2023年、小学生向けの「プラごみコースターをつくろう」という体験型の環境教材を開発しました。子供たちが自らプラスチックごみを成形加工してコースターを作ることで、プラスチックは何度でも使えることを学びます。2024年にはアクリル板からリサイクルした原料と海洋プラスチックごみを入れたおしゃれなアクセサリーを子供と一緒に作りました。このような体験がプラスチック資源循環の将来の担い手を育むことを期待しています。
いのち会議は、多様な団体と連携しながら、プラスチックを、使用後もごみになることなく再びプラスチックになるような繰り返しリサイクルできる製品にし、資源を守り循環させる社会の構築をめざしてまいります。
参考情報
・プラスチック資源循環法関連(環境省HP)https://www.env.go.jp/recycle/plastic/circulation.html
・基幹プロジェクト「⼤阪湾プラごみゼロを⽬指す資源循環共創拠点」(大阪大学SSI)
https://www.ssi.osaka-u.ac.jp/activity/core/zero_plastic_waste/
関連するアクションパネルのテーマ
9.資源循環
関連する「いのち」
いのちを「はぐくむ」