「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

いのち宣言

都市データの共有プラットフォーム(デジタルツインプラットフォーム)を構築し、その活用、システム統合により、脱炭素化、廃棄物ゼロ、災害レジリエンスを実現して、都市を安全で持続可能な環境へと変革しよう

人類は長い年月をかけて今日の居住環境を形成してきました。多くの都市が発展を遂げ、都市では人びとが活動を営むために必要となるさまざまなサービスが提供されています。シェルター機能を提供する住宅建築物、その間の移動機能を提供する交通システム、それらを駆動させるためのエネルギー供給システム、自然界から資源を採取し有用なものに変換する生産システム、廃棄物を処理し資源を循環させる廃棄物処理・資源循環システムなど、都市を支える各種システムが形成され、機能性、利便性、快適性、効率性、安全性、安定性、経済性、環境性などが自律的に向上する仕組みが構築されています。

一方、温室効果ガス排出に起因する気候変動が顕在化しているように、総体として、地球環境がその安定性を維持できる限界(Planetary Boundaries)※1を超えて環境負荷が増加する実態が明らかとされています。このような状況に対して、気候変動緩和ではカーボンニュートラル、生態系保全ではネイチャーポジティブのように、持続可能な社会を実現するための要件が明らかにされ、実現方策の検討、社会実装が求められています。しかし、1.5℃の地球温暖化目標達成のために求められる2050年カーボンニュートラルは年率4%の削減を意味します。要求される変化の規模は大きく、速度は速くなっています。気候変動を緩和するには、既存のシステム構造を前提とする改善では不十分であり、システムの構造的変化、システム間の統合が必要です。

大阪大学大学院工学研究科都市エネルギーシステム領域では、特に住宅建築物ストックにおけるエネルギー需要のモデリングと脱炭素化に向けたシナリオ分析に取り組んできました。本分野では住宅建築物に導入可能な各種省エネルギー技術の導入、空調・給湯などの熱用途におけるエネルギー転換、太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーの利用が主な対策として考慮されてきましたが、 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)による気候変動に関する第6次評価報告書※2では、これらの既存対策に加えて、デジタルソリューションの活用、居住者・利用者の行動・ライフスタイル変容、サービス需要側・供給側の統合的運用など、より広い視野でシステム変化を構想し、システム間・分野間の融合を進めていくことが求められています。上記の各問題領域においても同様に、大きく早い変革が求められている状況にあります。

また、大阪府市はつくば市とともに内閣府のスーパーシティに選定され、大阪スーパーシティプロジェクトは、大阪広域データ連携基盤(ORDEN)の構築に関わっています。ORDEN は都市のデジタルツインとして発展することが期待できます。大阪大学D3センターでは、ダイキンとの共同研究機構D-child の中でスマートシティ/スマートビルディングのデジタルツインに関する研究を行っている他、デジタルツインを使った避難シミュレーション研究を行い、強靭なまちづくりに関わっています。

都市のデジタルツインプラットフォーム

このような背景から、大阪大学先導的研究機構DX 研究部門、工学研究科都市エネルギーシステム領域は2050年を見据えた今後のアクションプランとして、システム融合のための都市デジタルツインプラットフォーム※3の構築を構想しています。開発するプラット フォームは、住宅建築物、都市構造物、都市インフラ等を3次元都市モデルとしてデータ化・可視化し、各種システムの運用、管理に関する情報を包括的に取り込み、都市における現況把握と将来予測を可能とするほか、変革シナリオに基づいて分析を行う機能を提供します。政策決定者、計画者・管理者、都市居住者が直感的に相互理解できるようにし、政策的判断や自治体の計画立案を容易にします。加えて、人々の滞在場所、生活行動、移動、それらに伴うサービス需要を模擬する合成モデルを統合化することで高い時空間解像度でシステム間の相互関係を再現し、リアルタイム性を持たせることで災害時の対応などにも応用可能とします。このようなプラットフォームを日本だけではなく、成長を続けるアジアの都市にも応用可能な仕様とし、世界の都市の課題解決に資するものとします。

いのち会議は、大阪大学先導的研究機構DX 研究部門、D3センター、工学研究科都市エネルギーシステム領域、大阪府スマートシティ戦略部、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)などと協働して、都市データの共有プラットフォーム(デジタルツインプラットフォーム)を構築し、脱炭素化、廃棄物ゼロ、災害レジリエンスを実現し、都市を安全で持続可能な環境へと変革する活動を続けます。

【註】

※1 The 2023 update to the Planetary boundaries. Azote for Stockholm Resilience Centre, based on analysis in

Richardson et al 2023

https://www.stockholmresilience.org/research/planetary-boundaries.html

※2 IPCC, 2023: Climate Change 2023: Synthesis Report.

Contribution of Working Groups I, II and III to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Core Writing Team, H. Lee and J.

Romero(eds.)]. IPCC, Geneva, Switzerland, 184 pp.,

https://doi.org/10.59327/IPCC/AR6-9789291691647

※3 Alvi, M., Dutta, H., Minerva, R., Crespi, N., Raza, S. M., & Herath, M.(2025). Global perspectives on digital twin smart cities: Innovations, challenges, and pathways to a sustainable urban future. Sustainable Cities and Society, 126, 106356. https://doi.org/10.1016/j.scs.2025.106356

【参考情報】

・大阪広域データ連携基盤(ORDEN)

https://www.pref.osaka.lg.jp/o060020/tokku_suishin2/orden/index.html

・D-child

https://otri.osaka-u.ac.jp/dichild

・Architectural Morphology Cyber Community

http://www.comy.cmc.osaka-u.ac.jp/

・大阪大学大学院工学研究科下田研究室 Publications

https://see.eng.osaka-u.ac.jp/seeue/seeue/paper

・戦略的イノベーション創造プログラム:スマートエネルギーマネジメントシステムの構築

https://www.jst.go.jp/sip/sems

【アクションパネル】

エネルギー・気候変動、資源循環

【SDGs】