いのち宣言
科学技術を活用して個々の健康管理と多様性の尊重を推進し、すべての人がいのちをまもり、はぐくみ、かんじる未来を実現しよう
世界が直面している現代の課題は、急速な科学技術の進展とともに生じた「いのち」を取り巻く問題です。これには生命倫理や人間の尊厳、さらには技術と人間との関係性など、多岐にわたる複雑なテーマが含まれていますが、中でも、科学技術を活かしてパーソナライズドケア(一人ひとりの特性に合わせたケア)を提供することが、未来の社会に向かって極めて重要です。パーソナライズドケアは、個人の健康状態や生活環境にもとづいて、最適な予防や治療を行う健康増進アプローチです。身体的・精神的健康をより的確に守り、「いのち輝く」未来の実現に大きく寄与すると考えられます。一人ひとりが心身ともに健やかで、より豊かな人生を送るためには、科学技術を通じて個別のニーズに対応する健康ケアが不可欠です。この技術を社会に普及させ、健康で幸福な未来を築いていくことが重要です。
大阪大学産業科学研究所の神吉輝夫研究室では、これまでパーソナライズドケアに必要な技術基盤として、脈波や心電計測を行う高感度センサの開発に取り組んできました※1,2。特に、日常や集団活動時においてもノイズを抑えた心拍数や自律神経の計測システムを開発し、さらに多様な生理データをもとに、ストレスやリラックスの度合いを解析できるシステム開発の研究を進めています。これらの技術は、個々の健康状態をリアルタイムで把握し、未来のパーソナライズドケアを実現するための重要なステップとなっています※3。次に、科学技術を活用して「いのち」にかかわる知識と技術を広 く普及させることも重要です。これを実現するために、神吉研では、学校や地域社会で心拍計測や自律神経解析を通じて「いのち」を理解する教育プログラムを導入し、若い世代が科学的な知見にもとづいて「いのち」の大切さを感じることを目指します。また、地域コミュニティにおいて、開発したデバイスやシステムを活用したヘルスケア支援を実施し、様々な集団の営みや活動の中でストレス軽減やレジリエンスを高めるための教育プログラムを進めます※4。これにより、すべての世代が「いのち」を育む意識を持つことができるでしょう。
さらに、多様性を尊重し、異なる背景を持つ人々が協力して健康管理やストレス管理に取り組む「共創ネットワーク」を構築することが重要です。神吉研では、異分野の研究者や医療専門家と協力し、発達障がいのある人を含む多様な人びとの生理指標データをもとにした新しい健康管理方法を開発し、個人の多様性を認め理解するための教育プログラムを導入します。また、グローバルな協力を促進するために、健康管理に関する知見やリソースを共有するオンラインプラットフォームを構築し、2050年に向けて、持続可能で多様性に配慮した健康増進社会の実現を目指します。
いのち会議は、こうした活動に参加し、科学技術を活用して個々の健康管理と多様性の尊重を推進することによって、すべての人が「いのち」をはぐくみ、かんじる未来を実現したいと考えます。

科学技術を活用したパーソナライズドケアのイメージ
【註】
※1 フレキシブルVO2薄膜を用いた超高感度歪みセンサの創製
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsapmeeting/2019.1/0/2019.1_1353/_pdf/-char/ja
※2 フレキシブルひずみセンサの感度を200倍に! インフラ管理・微弱生
体信号検知の実用化に大きく前進!
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20191218_3
※3 あの!ミライ人間洗濯機® 最新情報!!TEAM EXPO 2025」プログラム~大阪・関西から未来へのアクション~
https://www.youtube.com/watch?v=0iZ0j34TRmE
※4 ムーンショット型研究開発事業:目標9 研究開発プロジェクト 子どもの好奇心・個性を守り、躍動的な社会を実現する
https://www.jst.go.jp/moonshot/program/goal9/97_kikuchi.html#c-list
【アクションパネル】
多様性・包摂
【SDGs】


