いのち宣言
一人ひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会のために、繁華街でのこどもや若者のセーフティネットをみんなでつくろう
日本の一人当たりGDP は約33,138ドル※1ですが、17歳以下のこどもの7人に1人は年間8,500ドル以下で暮らしています※2。全国では、約29万5千人の中高生が不登校となり※3、高校中退者は年間約4万6千人※4、無業の若者(15~34歳のNEET)は約90万人に上ると推計されています※5。
10代の置かれた境遇はさまざまです。経済的に困難な状況にある人、家庭や学校が安心できる場ではない人、発達障がいや学習障がいを抱える人など、複数の困難が重なっていることも少なくありません。外見は大人びて見えても、未成年であるために選択肢は限られ、頼れる人とのつながりを失うと、社会のセーフティネットにも辿り着きにくくなります。中には、危険な大人と関わり、事件に巻き込まれてしまう深刻なケースもあります。
貧困は、教育や文化的経験の機会を奪うだけでなく、「居場所」と思える場やコミュニティに出会う機会も減らします。さらに、いじめや人間関係のトラブル、家庭での暴力や虐待・無関心といった過去の経験が心理的な壁となり、人とのつながりを避け、孤立を深める要因となっています。
このような日本における若者やこどもの貧困問題に対して、認定 NPO 法人D×P は、大阪ミナミのグリコの看板の下、略して「グリ下」と呼ばれる地域に集まる家出や虐待を受けてきたこどもや若者たちのサポートを行ってきました。グリ下から徒歩4分ほどの場所に 50坪ほどの場所を借りてナイトユースセンターを設立し、民間から寄付を集め、年間6,000万円をかけてグリ下にきているこどもや若者への支援拠点をつくってきました。
大阪府や大阪市も、D×P の活動をきっかけにグリ下への視察を行い、「グリ下会議」という会議体を立ち上げました。大阪市とは協定を結び、実態調査を行い、2~3割の人が安定した住居がない状況にあることが判明しました。大阪市にはそれを受けて住居支援に向けて動いていただき、NPOとも連携して住居支援を行ってきました。



食糧支援の箱や大阪ミナミでの支援
D×P では、現在、週2回ナイトユースセンターを開設し、年間 4,000人が利用しています。それ以外の日は病院や住居を一緒に探すなど同行支援を中心に行い、こどもや若者たちの基本になる衣食住を整えることを日々行っています。
今後、D×P はオンライン相談員の増員や研修体制の強化により、全国どこにいても安心して相談できる環境を整えるとともに、地方自治体や学校、企業、NPOと連携して地域ごとに支援のハブを構築します。さらに、若者の関心や適性に応じた職業体験やインターンシップを拡充し、企業とのマッチングを強化して就労機会を広げます。また、孤立が深刻化する前の段階でつながれるようSNS や学校・地域でのアウトリーチを推進し、若者の声や現状を社会に発信して偏見や誤解をなくし、支援の輪を広げていきます。
2050年の日本を考えると、AI の発達によって様々なサポートが受けられるようになるかもしれない反面、行政の支援や制度の狭間にいるこどもたちや若者たちはその時代も多くいる可能性もあります。繁華街は人びとを引き寄せる魅力があるため、また寂しさを埋めてくれる存在でもあるため、これからも多くのこどもたちや若者たちが集まる可能性があります。
こうした可能性に備え、いのち会議は、D×P などの組織とともに、公的なセーフティネットのみならず、民間のセーフティネットを整備し、どのような環境で育ったこどもや若者でも、それぞれが生活を整えるためのつながりが得られる支援拠点を全国各地に形成していきます。
【註】
※1 国際通貨基金(IMF)『World Economic Outlook Database, 2024』
※2 日本財団『こどもの貧困』(Ending Child Poverty)2023年
※3 文部科学省『令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』
※4 文部科学省『令和5年度 学校基本調査(確定値)』によると、2023年度の高等学校中退者数は45,813人で、中退率は1.5%である。
※5 内閣府『令和5年版 子供・若者白書』
【参考情報】
認定NPO 法人D×P
https://www.dreampossibility.com/
【アクションパネルのテーマ】
平和・人権
【SDGs】
