いのち宣言
【提言】2050年の未来を見据え、科学をベースとしたマルチステークホルダーによる議論を始め、SDGs達成期限である2030年の先の⽬標設定に向けた機運を醸成し、⾏動しよう。
概要
SDGsはグローバルガバナンスのあり方を変える仕組みです。ルールをベースとし、条約や協定、議定書などを基軸として「国際レジーム」を形成し、グローバルガバナンスを進める「ルールによるガバナンス」が、これまでグローバルガバナンスの主流でした。しかし、多くの課題では対立点や緊急性の認識が共有されず、ルール作りのための国際交渉は遅々として進まない状態が続いていました。
そのような中で登場したのが「目標ベースのガバナンス(governance through goals)」です。多様なルールを各国が持ち寄って、すり合わせた結果出来上がるルールによるガバナンスとは異なり、新たなグローバルガバナンスの形態では、目標の共有がメインになります。SDGsで言えば、15年ほど先の目標を共有することが交渉の目的となりました。一歩先に行くためのルールを作るのではなく、大きな目標を共有することで、やれる国や人、組織がまず目標に向かって進み、それを共有する。共有する中で新たなパートナーシップが生み出される。こうした、それまでにない形でのグローバルガバナンスが動き始めたのです。
SDGsの登場から10年の間に様々なことが起こりました。コロナ禍、戦争など、2015年当時には多くのひとが想像できなかったことが、現実に起こりました。こうした中で、目標ベースのガバナンスはどう動いてきたのでしょうか。
世界全体の動きについては、2023年に国連で取りまとめて発表した、GSDR(Global Sustainable Development Report)で振り返りがおこなわれました。SDGs達成に関する進捗は20%を割り込み芳しくないこと、トランスフォーメーションが必要で、そのモデルを提示する必要があること、どうすればトランスフォーメーションを起こすことができるかを解明することが必要だということなどがわかりました。
日本の動きは、2025年のVNR(Voluntary National Review)で示されました。244のグローバル指標に対して173の指標が計測できていること、うち20はすでに達成し、改善傾向のものが53、後退が22あることもわかりました。多角的な評価により、進捗しているところもあるものの、制度的な側面がまだ遅れていること、リーダーシップが足りないことなどがわかってきました。
これらを踏まえ、そろそろ「その先」を見始めることが重要になります。SDGsの達成期限は2030年。そこまでに達成努力を行うことはもちろん重要です。しかし、「持続」可能であることを考えれば、2030年の先の目標やアクションを考える必要があります。
2050年あたりを見据えて動き出す時期が来ました。
このような状況を踏まえ、2025年2月、慶應義塾大学の蟹江憲史教授を中心に「ビヨンドSDGs官民会議(Beyond SDGs Public-Private Forum)」が立ち上げられました。政府、産業界、学界、NGO、ユース団体など、様々なステークホルダーが集まり、2050年あたりを見据えた未来について、ウェルビーイングと能力、持続可能で公正な経済、持続可能な食料システムと健全な栄養、エネルギーの普遍的アクセスを伴う脱炭素化、都市と郊外の発展、グローバルな環境コモンズなどをテーマに目標対象分野や目指すべき将来目標についての議論を始めています。2027年には国連で、ビヨンド2030アジェンダの議論が始まることになっています。「ビヨンドSDGs官民会議」は、まずはそこに提言を提出することを目標としていますが、その議論過程自体が貴重な学びのプロセスであると捉えています。
いのち会議は、「ビヨンドSDGs官民会議」に参画しSDGsの反省を踏まえながら、何を目指すべきなのか、地球と人類の未来のためにあるべき姿を考え、また、その姿にたどり着く道筋、ガバナンスのあり方を世界に示してまいります。
参考情報
・ 「ビヨンドSDGs官民会議 (仮称: 英語名Beyond SDGs Public-Private Forum)について」(2024年10月31日、円卓会議構成員 蟹江憲史)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/entakukaigi_dai19/siryou4-2.pdf
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