「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

いのち宣言

【提言】人間以外のいきものに、これまで人類が占有してきた土地を還していこう。

概要

人間の文明の地球に対する最大の負の遺産は、人間が適切な「縄張りの持ち方」を忘れてしまったことではないでしょうか。人間以外のいきものとの必要な距離感を忘れ、市場経済や国家の言い分を振りかざし、土地を開墾し続けています。過剰で非合理的な恐れの念と、「もっと」という欲が、多くの種を絶滅へと追いやり、人間内の混乱も止みません。SDGsが解こうとする問題はどれも、スペース(土地、領土)に帰着すると言えます。スペースの問題は物理的環境にとどまらないからです。エネルギーやハイテク素材、宗教をめぐる地政学的対立、持続不可能な経済競争、さらには人種差別やジェンダー差別などは、他者の居場所を奪う比喩的な意味でのスペースをめぐる争いだと言えます。 

人間以外のいきものの生息地を奪う私たち人間がなすべきことは、自分は地上に生きるいのちであると認識できる身体と心を取り戻し、他のいきものに生息地を還していくことです。人間の生息地が自然と融合し直すことによって、社会・経済活動が地球の再生に寄り添って速度を緩め、人間のウェルビーングが豊かになります。アーティストの井口奈保さんはこのように考え、アクティビストでも生態学者でも建築家でも同じ時空間を共有する他の存在に「コンパッション(共感)」を表現したいアーティストです。 

井口さんのアートは、絵や音楽など鑑賞する対象ではなく、人を巻き込み、働き方、暮らし方、考え方、感じ方を変容させていくプロセスを実験することです。具体的には、「Give Space アーバンデザイン方法論(Give Space)」を進めています。それは「生態系を先生」とし、人間の土地利用、開発の仕方を刷新、他のいきものに生息地を還すことを目的としています。このためには、建物やインフラなど物理的側面だけ扱うのでは足りません。技術的解決法はあるのに、それを選択し予算を割いて実行しない理由は、経済指標や評価軸、それに影響される組織行動や文化といった人間のシステムが阻んでいるからです。そして、そのシステムは、人間の内面的な在り方に依存します。Give Spaceとは、スペースを、1.フィジカル、2.メンタル(経済、法律、組織、文化)、3.エモーショナル(感情、情動、感性)、4.スピリチュアル(心、魂)に分け、日々の行動の中で全方向に働きかけるプロセスのことです。 

井口さんは、これまでの活動を踏まえて一般社団法人Give Space Urban Design を設立し、1. 研究、2.実践、3.評価を通じて他の生き物に土地を還す取り組みを進める予定です。1では、世界の先駆的な事例、建築手法やツールの紹介、日本発信の論文執筆の促進等を進めます。2では、民間へ都市開発コンサルティング、個人向けの教育プログラムの展開、特に子供向けに「いのちの感性」と「自然への愛」を育むことに従事し、さらには、Give Spaceを実践する場所を、「土地はあるけれど、どうやって活用したらいいのか?」という問いを抱える人びとと協働で運営していきます。3では、すでに利用されている地球にポジティブな足跡を残すための評価方法を導入し、一つでも多くの開発プロジェクトがいのちを大事にする価値基準に移行するよう支援します。 

いのち会議は、 人間以外のいきものが生息地を共有できるようにするという「Give Space」の考え方が国の政策や都市開発、企業の事業に組み込まれるよう、政治や行政に携わる人びと、建築や工学等の知識をもった技術者などに働きかけてまいります。 

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4.街づくり・防災

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いのちを「つなぐ」

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