いのち宣言
【提言】企業が自分の行動に責任を持ち、未来のありたい姿を描いて社会に説明し、企業と社会が対話して、環境や社会の課題解決に向けて一緒に行動していく社会を実現しよう。
概要
あなたの実感はどちらでしょうか?
(A)経済活動は歪(ゆがみ)を発生させてしまう。
(B)経済活動で社会課題を解決できる。
世界人口は1950年25億人から2010年69億人とおよそ3倍増加し、GDPは約10倍に増加しています。人々は60年間で平均すると3倍豊かになりました。あらゆる社会活動量が1950年以降急速に成長しました。
一方、アース・オーバーシュート・デイ指標によると、2024年は、8月1日に、「人間が消費した資源の累積量」が「地球が1年間で再生産できる資源量」を上回ってしまいました1)。私たちは、経済成長と引き換えに地球に借金生活を続けています。
1999年のダボス会議で、前々国連事務総長コフィー・アナンが、市場拡大の速度と社会や政治システムの速度がバランスを失っているグローバル市場を「人間の顔を持ったもの」にしようと呼びかけて、「国連グローバルコンパクト」を設立しました2)。そして、すべての企業が守るべき共通の国際原則(人権、労働、環境、腐敗防止)を展開しました。
また、コロナパンデミックの最中2020年のダボス会議では、半世紀ぶりの「マニフェスト」改定を行い、大きな方向転換をしました3)。自分と株主の利益が一番という従来の考え方から、企業は、従業員、顧客、サプライヤー、地域、社会すべてのステークホルダーに貢献すべきと改めました。株主への利益還元だけなく、社会価値を生み出すことが企業の評価となり、未来の持続可能な社会に向けて行動することを宣言したのです。
企業が持続可能(サステナブル)な社会実現に寄与するためには、社会から未来を預けてもらえる信頼が必要です。その信頼を得るための行動で、情報開示と透明性は益々重要になって来ています。近年、欧州規制やコーポレートガバナンスなどの基準により環境・社会・ガバナンス(ESG)の情報開示が求められていますが、外部監査等による義務的な開示よりも、むしろ自発的で誠実な説明と対話を目的とするべきでしょう。
2020年に策定された日本政府の「ビジネスと人権に関する行動計画」の施策のひとつに「消費者と協働して社会課題を解決させる経営(消費者志向経営)の推進」があります4)。環境的に持続可能でない方法で作られた商品を買わないことや、生産に関わる人びとが、奴隷的労働や児童労働によって作られた商品を買わないなどの消費者のエシカル購入を推進するものです。この施策はSDGsのターゲット12.8「消費者のエシカル・マインドの醸成(じょうせい)」を推進するものです。
消費者庁の資料によると、「消費者」とは多様なステークホルダー全般を例示しています。そして「消費者志向経営」とは、消費者(多様なステークホルダー)と共創・協働して社会価値を向上させる経営であり、これは、近江商人の共生思想「三方よし」と通底するものと言えます5)。企業が「誰」と組んで、何の「社会課題」を解決するか、そのために何をすべきなのかを考えるフォーマットとなるでしょう。

以上のことを踏まえ、いのち会議は、サステナビリティに取り組む企業リーダーや、関係団体・市民社会との連帯をさらに発展させて、2030年までのSDGsゴール達成を推し進め、その先も、なおダイナミックな三方よしによって環境と社会の課題の解決と、平和といのちをまもる社会を実現することを目指します。
参考情報
1) Earth Overshoot Day – Geneva Environment Network
2) https://www.un.org/sg/en/content/sg/speeches/1999-02-01/kofi-annans-address-world-economic-forum-davos
3) Davos Manifesto 2020: The Universal Purpose of a Company in the Fourth Industrial Revolution | World Economic Forum (weforum.org)
4) https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100104121.pdf
5) https://www.caa.go.jp/consumers/consumer_oriented_management/
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