いのち宣言
【提言】ジェンダー平等を実現する具体的な一歩として、みんなで月経について「知る・支える」を広めよう。
概要
ジェンダー平等、というと、遠い遠い目標のように感じていませんか。たしかに、その目標の実現には、さまざまな形の不平等や障壁を、多様なアプローチで乗り越えて、改善と改革を積み重ねていく必要があるのでしょう。
そうした課題のひとつに月経(生理)への対処があります。思春期になれば初経(はじめての生理)が来て、ほぼ1か月の周期で月経を経験すること自体は、自然なことです。しかし、経血の対処は必要ですし、個人差はあるものの月経痛で苦しい思いをする人も少なくありません。勉強や仕事をするときの ハンデになることもあります。学校や職場、そして外出先で生理用品が手元になくて、あるいは適切な頻度で交換できなくて、経血が漏れないか心配したことのない人はむしろ少ないのではないでしょうか。
一方で、日本もふくめ、世界の多くの社会で月経は「隠すべきもの」とされていて、悩みを共有できずに一人でがまんしたり、対処したりする人が多くいます1)。月経という生理現象が存在することは学校で習っていても、月経についてコミュニケーションが取られていないのが現状でしょう。月経自体やその個人差、多様化する生理用品や身体ケア、そして他者へのケアについて、どのジェンダーかに関わらず、もっと「知る」ことが大切です。
そこで、たとえば《生理用品がトイレ内に無償提供で常備されていること》といった小さな工夫をして社会をデザインすることで、月経のある人のウェルビーイングがちょっとだけ前進するかもしれない。そういう想いで大阪大学UNESCOチェアMeW(Menstrual Wellbeing by/in Social Design)プロジェクトでは2021年から、そのしくみづくりを行ってきました2)。具体的には、段ボール製で組立式の生理用品提供用ディスペンサー、通称MeWディスペンサー(写真)を社学共創で開発し、トイレ内に簡単に設置できるようにしました。大阪大学では、ダイバーシティー&インクルージョンセンターとMeWプロジェクトが協力して、3つあるすべてのキャンパスの女子トイレとオールジェンダートイレにMeWディスペンサーを設置をしました3)。在学生、受験生、そして学外者からも「助かった」という声が届いています。
このMeWディスペンサーは、他大学、学校(小・中・高)、自治体、企業などでも利用が広がっていますが、避難所にも導入実績があります。災害時には、避難所での生活を余儀なくされることがあり、被災者が生理用品にアクセスできなかったという話が度々聞かれます。3.11以来、状況が改善されているとはいえ、支援物資として生理用品が避難所に届いていても、人通りの多い場所に置かれていたため利用者が取りに行きづらかったり、必要とする生理用品の種類ではなかったり、ということが2024年の能登地震でも聞かれました。
トイレットペーパーと同じように、生理用品もトイレに設置されている。そうした月経を「支える」実践が、今後さらに学校に、企業に、社会に広がっていくことで、それが月経について考え、語り、「知る」きっかけにもつながります。MeWプロジェクトでは多様なアクターと連携しながら、啓発とアウトリーチ活動を続けていきます。
いのち会議は、こうしたプロジェクトや試みを大切にし、ジェンダー平等を実現する具体的な一歩として、月経について「知る・支える」を広めてまいります。

参考情報
1) UNICEFも月経を課題視してSDGsでモニタリングしています
https://washdata.org/monitoring/menstrual-health
2) 大阪大学ユネスコチェア MeWプロジェクト:
https://mewproject-osaka-u.jp
3) 大阪大学 ダイバーシティ&インクルージョンセンター「生理用品のトイレ内での無償提供」ディスペンサー設置
https://www.di.osaka-u.ac.jp/dispenser-list
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