「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

いのち宣言

【提言】「いのち」の源である窒素の良い循環が、健康な土や水を、元気な草や牛を、おいしい牛乳をつくる。「うんち」を「技術」で「より良く循環」させ、地球の窒素問題に対応しよう。

概要

私達ヒトや全ての生物の「いのち」を支えるカラダは、水分と脂質を除くと、ほとんどがタンパク質でできています。タンパク質は、大気中の窒素を源として、土壌、植物、動物、微生物など「共に宿る大きないのち」の循環で摂取されています。自然界で植物がその「いのち」の源として利用できるアンモニアなどの窒素化合物、いわば「おいしい窒素」は、窒素固定菌等から生成される、ほんの僅かの量しかありませんでした。それが1900年代に発明されたアンモニア合成法(ハーバー・ボッシュ法)により、人工的な「おいしい窒素」である窒素化学肥料を作る技術が確立されると、農作物の生産が増え、食糧が増加しこれにより世界人口は爆発的に増加しました。

人工的な「おいしい窒素」の製造は、極度の貧困や飢餓等の社会的課題を飛躍的に解決し、人類に大きな恩恵を与えましたが、一方で多くの弊害があることも知られてきました。窒素化学肥料の多くは「作物に吸収されず」、土壌の酸性化を経て土壌劣化(=砂漠化)や、川や海の富栄養化による植物プランクトンの大発生による酸欠という生態系への深刻なダメージ(例:サンゴの死滅の一因)を引き起こしています。EUをはじめとする世界の農業大国で、炭素問題よりも深刻と考えられている窒素問題の本質は、人工的な窒素肥料由来の窒素資源がしっかりと植物に利用されず「流れ去っている」ことにあります。

また、陸上の動物の9割が人間と家畜となった今、大量に排出されるヒトと家畜の「うんち」も地球の窒素問題を悪化させる大きな要因となっています。人工的な窒素肥料の生産と利用が爆発的な拡大を遂げた一方、ヒトと家畜の「うんち」に含まれる窒素は適正に循環利用されず、下水処理や堆肥化を通じ空中や水域へ放出され続けてきました。その結果、地球上の「おいしい窒素」が過剰になってしまい、地球の許容限界「プラネタリー・バウンダリー」を超過した最大の課題として世界中で注目されつつあります。

北海道のある酪農場では、(株)LIFULL Agri Loopが展開する鉄触媒を利用して牛の糞尿を「おいしい窒素」に変え、化学肥料を使わずにおいしい牧草を育て、その牧草で健康な牛を育てる「画期的な、うんちの循環(Poop Loop)」を行っています。鉄触媒を入れた糞尿タンクからは、有害なアンモニアや温室効果ガスは殆ど出ず、悪臭は全くありません。触媒によって窒素が酸化せず、肥料成分として安定貯留されるからです。触媒の入った糞尿を撒いた牧草地では土の酸化が防がれ、糖度の高い牧草が沢山採れるようになり、牛は牧草だけを食べて健康に育ち、長寿な上に乳脂肪たっぷりのおいしい牛乳をたくさんだすようになりました。また、牧場は、化学肥料だけでなく穀物などの配合飼料の購入も不要になった為、環境負荷を減らしつつ、農業生産性を向上させることができました。 農家の大部分が赤字経営を強いられ、「3K(きつい、汚い、稼げない)」というネガティブなイメージもあいまった就農人口の減少、ひいては食料自給率の低下にも繋がっている日本の現状において、このような、「窒素問題への対応」と「儲かる農業」の両立が出来た事例があります。

株式会社LIFULL Agri Loop 作成

日本の畜産業で排出される糞尿に含まれる窒素は、日本で使用されている窒素化学肥料とほぼ同じ量です。(株)LIFULL Agri Loopは、2050年に向けての取り組みの一つとして、「うんち」を「技術」で酸化を抑えながら「おいしい窒素」に変えて農業で利用することが広まれば、土壌劣化や水域の窒素汚染、窒素由来の温室効果ガスの排出を抑止に寄与すると考えます。結果として、環境全体が健康になり、食を介して人も健康になることが期待されます。

株式会社LIFULL Agri Loop 作成

「いのち会議」は、(株)LIFULL Agri Loopなどと協働し、窒素循環の重要性について情報発信や教育活動を通じ、社会全体に理解と共感を広める活動を継続的に拡大すること、また産学の協働・共創の場により、窒素の「より良い循環」に寄与する様々な技術の発掘と活動を支援する事に取り組みます。

参考情報

・持続可能な環境と食料安全保障を両立させる窒素利用の在り方 林健太郎*
 https://ajass.jp/Sympo/2023/2hayashi.pdf
・環境省・環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年度 環境の状況
 https://wwwhttps://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r05/html/hj23010101.html
・日本肥料アンモニア協会・家畜ふん尿の肥料成分
 http://www.jaf.gr.jp/faq.html

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