「いのち会議」とは、「いのち」とは何か、「輝く」とはどういうことか、「誰一人取り残さない」ために何をなすべきかを、あらゆる境を越えて考え、話し合い、それぞれが行動に移す場です。いのち会議 

いのち宣言

【提言】みんなの『いのちの水』をみんなのためにみんなで守ろう

概要

わたしたちには毎日どのくらいの水が必要なのでしょうか。

のどが乾かないためであれば1日2~3リットルの飲み水があれば十分です。でも、お風呂で体を洗ったり、トイレを流したり、炊事をしたり、衣服を洗ったり、顔を洗ったり歯を磨いたりするのに、日本では毎日200~300リットルもの水道水を使っています。動物として生き永らえるのに最低限必要な量の百倍もの水のおかげで、尊厳と自己尊重感をもって文化的で健康な生活を送れているのです。

それだけではありません。水と同じようにいのちをつなぐためになくてはならない食料の生産にもたくさんの水が必要です。平均すると1日あたり2000~3000リットル、年間で約百万リットルもの水を使って生産された食料を私たちは毎日食べている計算になります。

わたしたちの命をはぐくみ、つないでいくのにそんなにたくさんの水が必要なのに、普段水で困らないのは、日本は水が豊かだからなのでしょうか。確かに世界の陸地平均の約2倍もの雨や雪が降りますが、狭い国土に多くの人が住んでいるために、1人あたり最大限利用可能な水資源の量は世界平均の半分しかありません。しかも、島国で斜面の傾きが急なため、降った雨はすぐに海へと流れてしまいます。実際、雨が普段の年よりも少ないとすぐに渇水になってコメが不作になったり、水道の水が出ない断水になったりといった事態が数十年前の日本ではあたりまえでしたし、地域によってはつい最近までそういう状況でした。

現在の日本で普段水を気にせずに済むのは、水の災いを最小限にする一方で水の恵みを最大限得られる様にするため、自然環境に多少の負荷をかけつつも水を貯めたり、貯めた水を必要な場所まで運んだりする施設を長い年月をかけて整備してきたおかげです。

知覚できないくらい下にある構造物、という意味で「インフラストラクチャー」略してインフラと呼ばれるため池やダム貯水池、水路、堰、水門、ポンプ、浄水場、下水処理場、堤防、遊水池といった施設に加えて、河川や地下水、森林や湖沼、湿地といった自然生態系はもちろんのこと、さらには水田や畑地などの農地のような人工生態系も水を貯え、流れを平準化し水質を浄化してくれています。そして、そうした自然と人工物を上手に保全し維持管理してきたそれぞれの地域の組織や私たち自身も、安定した水の恵みを与える仕組みの重要な要素なのです。

このように私たちの豊かで安全、健康で文化的な暮らしを支える有形無形の仕組みは「水のみんなのインフラ」略して「水みんフラ」と呼べるでしょう。しかし人口減少や過疎化に伴う地域の担い手の減少や組織の弱体化、料金収入不足による不十分な維持管理による施設の老朽化、そして社会構造の変化や気候変動などのために「水みんフラ」の未来には暗雲が漂っています。そこで、東京財団政策研究所の「未来の水ビジョン」プログラムでは日本の水をめぐる実態の現状分析と未来ビジョンの形成ならびに水を通じた持続可能な地域の構築に向けた政策提言に関する研究を行いました。

水は天下のまわりものですが、安全な水の安定した供給は「水みんフラ」のおかげです。意識する機会が普段は少なくとも、長い年月をかけて地域で育み守ってきた「水みんフラ」が私たちの安全で豊かな暮らしを支えています。水に限らず、人や組織と自然と人工物が一体となった「みんフラ」、みんなのためにみんなで守るみんなの社会共通資本(水・食料・エネルギー供給、教育、医療、行政、治安、金融システムなど)の重要さへの関心が、社会における持続性の構築に大きく貢献すると期待されます。



いのち会議は「水みんフラ」の考え方を世界に広め、みんなの「いのちの水」をみんなのためにみんなで守る活動を進めてまいります。

参考情報

・東京財団政策研究所【政策研究】水みんフラ ―水を軸とした社会共通基盤の新戦略―
 https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4388
・Water infrastructure of all, by all, for all (Oki et al., 2024, Nature Water)
 https://www.nature.com/articles/s44221-024-00338-y

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