いのち宣言
【提言】心理学的アプローチを活用してトラウマの解消と潜在能力の活性化を推進し、人間が本来持っている潜在能力に気づき、イノベーションを創出しよう。
概要
発明、発見をしてイノベーションを創出するのが研究者の仕事ですが、特に大きな発明、発見ほど考えてできるものではありません。そもそも、研究者は、考えても出来ないことを研究のテーマにします。その時に、どうせ自分なんかにできっこないと思ってしまうと、挑戦する意欲が奪われてしまいます。逆に自分には出来る、心の底から思えていると、潜在能力が発揮され、自分の想像よりも凄いことが出来てしまうのです。研究活動以外でも様々な分野で同じことが言えます。そのような力を出せない原因は、メンタルが弱っていることからきているのです。
では、どうしたらメンタルを強くすることができるのでしょうか。修羅場や崖っぷちに直面し、それを克服・解決するといった経験を通してメンタルは鍛えられるということが考えられます。。しかし、ただ負荷を重くしていけばメンタルが強くなるかというと決してそうではありません。そこで心理学的アプローチが重要になります。トラウマをまず治しておかなければなりません。自分には能力がないというような自己否定的なトラウマを持っている人が限度を超える負荷に直面すると逆効果になってしまうのです。
一般的にトラウマは、交通事故や凶悪犯罪、自然災害など生命の危機に遭遇したり目撃したことによる「心理的ショック」のことを言いますが、実は日常生活の中での「怒られた」や「嘲笑された」など、一見軽い出来事でもトラウマになり得ます。特に幼少期には、些細な出来事が子供にとって大きな心の傷として残ることがあり、子供のためを思って注意した親の意図とは裏腹に、子供は自分の存在を否定されたと思い込んでしまうのです。その結果、人間が本来持っている潜在能力を発揮できなくなります。
大阪大学工学部の中に設置された「レジリエンスサポート&トレーニングセンター」では、心理学的アプローチによるトラウマ解消のカウンセリングを受けることができ、多くの教職員や学生が利用しています。具体的には、凡そ健全ではあるが、ハードルの高い難題に直面すると諦めてしまうという実感がある研究者が自らカウンセリングを受けに来て、難題に気後れすることなく挑戦できるようになったという事例があります。また、トラウマの影響で大学に来るのが難しくなった学生が周囲の勧めでセンターに来るようになって、カウンセリングを受けたりしているうちに実際に不登校が解消した例も沢山あります。
一般的に、トラウマ解消のカウンセリングの効果は大きく2つあります。1つはコミュニケーション能力の向上です。もう1つは、自信が生まれるということです。その結果、自己肯定感が高まり、本来持っている潜在能力を発揮できるようになって、益々イノベーション創出の可能性が高まります。この心理学的アプローチを普及し、社会を元気にするためにはカウンセリング技術の高いカウンセラーの養成が不可欠です。
大阪大学では、カウンセリング技術をAIや画像診断で高度化できるのかを試みるプロジェクトを今年度より開始いたしました。このプロジェクトでは、先ずはカウンセリング技術の高いカウンセリングとはどういうものかという分析を行います。具体的には、カウンセリングの場面を録画するとともに、体温計測、心拍数、脳波計測を同時に実施することで様々な情報を収集し、トラウマ解消のプロセスを解析します。会話内容の機械学習等からトラウマ解消の糸口を掴めれば、人工知能によるカウンセリングの可能性を見出せるのではないかと期待しています。このような各種計測や人工知能の実現は全て半導体技術の進化によって支えられております。

いのち会議は、半導体技術の進化が潜在能力の活性化に寄与できることを示していきたいと考えています。
参考情報
・大阪大学 工学部/工学研究科 レジリエンスサポート&トレーニングセンター
http://www.juf.eng.osaka-u.ac.jp/resilience/index.htm
・心理学的アプローチによる創造力の活性化
https://www.eng.osaka-u.ac.jp/prospective/introduction-research/550
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